星月 | ナノ


▼ 

ある日の昼下がり。

働く人々にとってけだるさが最高潮に達するこの時間、王立天文観測所前の掲示板周辺に、若い娘たちが集まっていた。


「まだ貼り出されてない!?」
「まだまだ!」
「よかったあ!間に合って」
「堂々と話しかけられる貴重な機会だもんね!」

浮かれた様子の会話が交わされている。
誰かが現れるのを待っている様子だ。



と、天文観測所の玄関から、目元の涼しげな青年が一人出てきた。

娘たちから黄色い歓声があがる。


青年は、外で待ち受ける娘たちの集団に少し驚きながらも、彼女らに笑顔を向けて掲示板の前へ進んだ。

「みんな気が早いなあ!」

そう言って、持っていた紙を掲示板に貼る。


「お待たせしました。今年の流星群は今月15日にやってくることがわかりました。ピーク時間は夜11時くらいとの予測です」

紙に書いてある『お知らせ』を読み上げると、娘たちがまた歓声をあげた。

そして次々青年に話しかける。

「早瀬さんっ!流れ星がよく見えるおすすめの場所はどこですかっ!?」
「今年は観測所の観測会の担当は早瀬さんじゃないの?」
「早瀬さんは今年誰かと一緒に見に行く約束とかしてますか!?」


青年――早瀬(はやせ)は、娘たちの質問に愛想よく答える。

「今年は魔法学校の屋上からすごくよく見えるよ、五月ちゃん。もちろん観測所の屋上は毎年よく見えるから観測会もよかったら覗いてみて。

桜ちゃん、今年の担当は北斗さんなんだ。あの人の話すごくおもしろいよ。

今年は外せない用事が入りそうで、見られないかもしれないんだ。俺のぶんまで楽しんで来て、風花ちゃん」



この国では、毎年冬の始めに大規模な流星群が観測される。

どこの世界でも『流れ星』というイベントは女の子たちの心をときめかせるものであるらしく、いつ見られるのか、どこでよく見えるのか、という情報は、この時期の彼女らにとって最大の関心事だ。


もっとも、今ここに集まっている娘たちは、情報だけが目当てというわけではないようだ。


prev / next
(2/13)

bookmark/back / top




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -