▼ chap.01 流星群の夜
こことはちがうどこかの世界。
そのまたどこかに、この国はある。
この国には、魔法が存在する。
国民の約半数が魔法を使えるのだ。
ここでの魔法は、生まれつき備わった力であり、知識・学問であり、歴史でもある。
魔力を持たずに生まれた者が魔法を使えるようになることはないが、魔力を持つ者は、知識や訓練によって、その力をのばしていくことができる。
魔力を持つ者は『星の民』と呼ばれ、持たない者は『月の民』と呼ばれる。
この国の魔法には星の力が関係していると言われており、そこからこの呼び名が生まれた。
一方、自ら輝くことができない、という意味合いを感じさせる『月の民』が『星の民』より劣っているのかというと、そうではない。
むしろその逆といえる。
この国の王族は『月の民』の血筋である。
この国で王制が始まったとき、『持たざる者』の方があらゆる意味で国を治めるのに適している、という考えにより、『月の民』から王が選ばれた。
昔から、『月の民』の間では『星の民』を卑しい種族だとする考えが強かった。
魔法に頼り、楽して金を稼ぐ連中だと。
現在ではこの考え方はかなり薄れてはいたが、完全になくなっているわけではない。
『星の民』側も、当初は差別のようなこの考えに反発していたが、しだいに自分たちの居住区を作り、そこで生活するようになっていった。
ただし王都だけは例外で、居住区をつくることが認められていないため、『月の民』と『星の民』が混在する場所となっていた。
現在では、仕事に魔法を用いる者は少ないのだが、魔法を生かした割のいい仕事があるのは基本的に王都である。
また、魔法とは関係なく単純に、国の中心である王都で働く者は『星の民』にも多い。
このような状況の王都では、地方と違い『星の民』への差別はほぼ見受けられないが、彼らが何か問題を起こすと、それが『月の民』であった場合にに比べ、かなり厳しい批判の目が向けられる。
とはいえ、真面目に働く普通の人々が暮らしていくには、王都はのきなみ居心地のいい場所であった。
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