星月 | ナノ


▼ 

「でも日夏、いいの?俺が行って」

一方の早瀬は、遠慮がちに問う。

「大事な孫に手を出すな、とか言われないかな?」


日夏が訪ねるのは、母方の祖父母の家で、早瀬は行ったことがなかった。

父の実家には、父の生前、早瀬も何度か一緒に来たことがあったのだが。


しかしもちろん、『幼なじみ』である早瀬の話は、よくしていた。


「そんなこと言わないわよ!お母さんが初めてお父さん連れて来たときは、おじいちゃんがそんなこと言ったみたいだけどすぐ仲良くなったし…」

「………嫌な予感がするなあ」


苦笑していた早瀬は、ふいに時計を見ると慌てて天文観測所へ戻って行った。

休憩時間に抜け出して来ていたらしい。



思いがけないことになったが、誕生日に流星群が来て、その日を家族と――そして早瀬と過ごすことができる。そのことに日夏は、今からわくわくしていた。



***



「俺は残るぞ」

日向は面倒そうに頭をかいた。

「えっ、クロ行かないの?」

「あのクソガキは千歳以上に俺をわしゃわしゃしてくんだよ。あんな目に遭うのはまっぴらだぜ」

日向の言うクソガキとは、叔母の息子のことである。

叔母は母の妹である。結婚が遅く、従兄弟にあたるその息子も、日夏とかなり歳が離れている。

母の実家は代々『月の民』の家系だったが、母も叔母も『星の民』と結婚したため、従兄弟も『星の民』である。

確か来年魔法学校初等部への入学を控えているはずだ。

犬姿の日向を気に入ったらしく、以前滞在したときは、四六時中くっついては撫でていた。


とは言え、日夏の行くところには基本的に着いて行く日向である。ということは。

「クロ、もしかして早瀬が来るから…?」

「ああっ!?べ、別に気なんか利かせてねえよ!あっち行けば二人きりになんてなれるわけねえしな!」


(そういう意味で言ったわけじゃなかったんだけど…)

早瀬と一緒に旅なんてしたくない、と考えているのではないかと申し訳なく思っていたのだ。


しかし、日向は気を利かせてくれたらしい。


意外な思いで、日夏は日向を見た。

「ねえクロ、やっぱり一緒に行かない?」

気遣いなんて日向らしくない。それに、流星群の日に今年も日向を一人家に残すなんて、寂しいことはしたくなかった。

「や、ほんとに行かねえ。いいんだよ俺は。最近寝不足だから寝る」

「………」

そう言われると、日夏は言葉を返せない。

彼は何も言わないが、日夏が契約魔法の解読をしている間、日向も起きているのだ。

日夏がしたくてしていることなのに、と少し気が咎めるが、それを口にするのは違う気がして知らないふりをしていた。


「俺は星よりうまいメシに興味あるからよ、流星群の夜は屋台でいろいろ買い食いするぜ。ナツの誕生日は帰ってきたら祝うからな」

「そっか、うん、ありがと、クロ」


日向が無理をしているのではないなら、彼がそうしたいと言うことを素直に聞こうと思った。



***



prev / next
(2/16)

bookmark/back / top




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -