▼
「日夏、どうした」
日向がエプロンをしたまま玄関に出て来た。
日夏の赤い目に、顔をしかめている。
「早瀬の声、してなかったか?」
少し目を細め、重ねて問い掛ける。
「なんでもない」
日夏は首を振った。
「……クロごめん、今日は疲れたからちょっとだけ休むね。ごはんは先に食べてて。片付けはわたしがするから」
日向とも必要以上には目を合わせないまま、日夏は自室へ向かう。
「おう」
日向は日夏の後ろ姿を見送った後、玄関の扉を振り返った。
そのむこうにいたはずの人物に小声で悪態をつく。
「あの馬鹿野郎、何しやがった…?」
end
prev / next
(12/12)