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それを正直に垂氷に言うと、彼は表情を変えずに答えた。
「お前の父親に、早瀬は意外と危なっかしいからよく見ていてくれと頼まれたからな」
早瀬は思わず苦笑する。
さすが父親だ。
だが父も、『危なっかしさ』の原因がこんなにも日夏絡みのことばかりだとは思っていなかっただろう。
「まさか垂氷に恋愛相談をする日が来るなんてな」
早瀬が冗談めかして笑うと、垂氷は「アホらしい」と言わんばかりの表情を見せた。
「そんなつもりはない」
そして、ふいに射るように早瀬の目を見ると、垂氷はさらなる忠告をした。
「これだけは言っておくが、気持ちがコントロールできないからといって魔力まで制御不能になるなよ。何度も言うがお前は魔力が強い」
早瀬はきょとんとする。
日夏のことと魔法のことを絡めて考えたことはなかった。
「例えば、他人を攻撃する魔法は禁忌だ。お前は日夏に何かあれば、それすらも忘れかねない」
「そんな馬鹿なことはしないよ」
どれだけ信用がないんだ、と早瀬は嘆息した。
それに、他人を攻撃するような事態になる前に、日夏を危険から遠ざけることの方が大事だ。
凍瀧からの評価『過保護』『心配性』は認めるが、垂氷の最後の忠告はさすがに大袈裟だと、早瀬は思った。
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