不埒なピアノレッスン
「そこ、指が違います。中指じゃなくて薬指だと先ほどから何度も言ってるでしょう」
「ごっ、ごめんなさい!」
どうして私がこんな目に。
ピアノなんて遠い昔に無理やり習わされた記憶があるくらいで、せいぜい幼稚園児レベルの私が。
「よくもまぁこんな腕で大役を引き受けましたね、君は」
「別に好きで引き受けたわけじゃありません……」
同じ小学校だったクラスメイトの男子が「そういえばお前ん家ピアノあるじゃん」なんて余計な一言を呟いたせいで合唱コンクールの伴奏に任命されてしまったわけだが、そんなの私に務まるわけがない。
こうして毎日なけなしの昼休みに暁先生の指導の下練習を繰り返しているのだけど、そう簡単に上達するはずもなく……。
「あっ」
「はぁ……だからそこは薬指だと何回言わせるんですか……」
先生は呆れ顔でため息をつく。
「どうやら君にはピアノのセンスがないようです。早々と事情を説明して謝罪し、他に伴奏希望者がいないのかもう一度クラスで話し合った方が良いのでは?」
「っ……、それができるならとっくにそうしてます! みんな嫌だから、こんなド下手な私に押し付けたんですよ。今さら代わってくれなんてクラスの雰囲気を悪くするだけです」
「……。仕方ありませんね。君のその立派なボランティア精神に免じて、今日は特別レッスンをしてあげましょう」
「ほんとですかっ!?」
縋る思いでパッと華やぐ。
だけど、その表情が一瞬で凍り付くことになるとは―――。
「あのっ……? 暁先生?」
先生は突然私の背後へ回ると、後ろから抱きしめるように身体を密着させて私の手の甲に自分の手のひらを重ねた。
「君は鍵盤を弾く指の圧が強すぎるんです。だからもっと、力を抜いて……」
「えっ、は、はいっ……」
耳にかかる息に背筋がぞくぞくと震える。
先生のスーツの襟から男の人の匂いがして、恥ずかしさに息が詰まりそう……。
「せ、先生……」
「黙って指先に集中しなさい。次に同じミスをしたら罰を与えますよ?」
「……っ」
ピアノの音よりも自分の鼓動の方がよっぽどうるさく耳に響いて、これじゃとても集中なんてできるわけない。
「ぁっ……!?」
「くす……言った傍から早速やってくれましたねぇ」
「や、あっ……先生、何を……っ」
ゆっくりと下に伸びる手がスカートを捲り上げショーツの中へと入っていく。
「罰を与えると忠告したじゃないですか」
「や、やだ……そんな、やめ……、はぁぅっ……!」
茂みの先にあるクリトリスをきゅっと摘まれて、思わず甘い声が漏れる。
ビクンと身体が跳ねたその反動で鍵盤がポロンと音を奏でた。
「あぁ、今のタッチはとても良かったです。自分でもわかりましたか?」
「わ、わかりません! こんなのっ……、ふぁ……ぁっ!」
もう一度、今度はきつく摘み上げると引っ張るようにして刺激が与えられた。
ペダルに置かれた爪先の方までビリビリと強い快感が駆け巡って脚が震える。
「なら、君が覚えるまで何度でも教えてあげますよ。さあ、演奏を続けてください」
「ひっ、ぁ……! あぁっ……」
込み上げてくる蜜を指ですくって尖端に塗りたくり、ぐりぐりと押し転がす。
耳たぶを甘噛みされて先生の熱い吐息が間近で感じながら必死で鍵盤の上の指を動かすが、少しでも気を許せば指先がもつれてミスを誘う。
「んっ、はぁっ、ぅ……!」
ぐちゅ、と入口が広がる。
長い指が狭い孔穴を抉じ開けるようにゆっくり奥へと進む。
こんなのが特別レッスンだなんて……今すぐ逃げ出したい気持ちと、もう少しこのままでいたい気持ちが変に入り混じって頭の中がおかしくなりそう。
「先っ、生……ぁぁっ……ん! もうっ……、やめ……ふぅっ、うぁ……!」
「いいんですか? このまま悠長に練習を続けても、合唱コンクールには到底間に合いませんよ?」
「っ……、で、でも……」
―――口答えに対する罰。
ずっぷりと奥まで挿し込まれた指が、まるでそう言ってるみたいに激しく蠢き出す。
「全く、瑠璃さんはいやらしい生徒ですねぇ……このあと授業があるんですよ? 椅子を汚さないでください」
「そ、んな……ぁうっ……! はぁっ……んっ!」
「ほら、肝心の手が止まってるじゃないですか。一小節目からやり直しですね」
「ひっ……あ……んんっ! はぁっ、先生っ……やぁぁっ……はぁ」
奥を刺激する度に溢れてくる汁が小さな水溜りのようにお尻の方まで広がっていく。
首筋から顎の方へねっとりと舌で舐め上げられ、何度も背を仰け反らせて快楽に震えた。
「綺麗な旋律ですねぇ、君の蜜の音……。ピアノの才能は今一つですが、コッチの素質は十分じゃないですか。そのだらしなく開いた口で、どうして欲しいのか懇願してみたらどうですか?」
さらなる甘美を誘うその囁きが、私の中の理性を蝕んでいく。
「はぁっ……暁、先生……もっと、深い、ところっ……ぐちゅぐちゅ……して、くださっ……」
語尾が掠れる。
先生はふっと笑みを浮かべながら指の腹で膣壁を押し上げ、私の欲望を叶えてくれる。
激しく中を抉り擦られ、もうこれ以上意識を留めておくなんて限界だった。
「はっぁ……、ああっん! やっ……、は、ぁ……だめ……だめぇぇっ……!」
崩れ落ちる身体を受け止めた鍵盤は耳障りな雑音を響かせ、甲高い喘ぎ声をかき消した。
「……はぁ、……はぁ……」
「おやおや、この程度で根を上げてはいけませんよ。君が恥をかかないよう本番までにみっちり指導してあげますから。……ちゃんと最後まで頑張れますよねぇ、瑠璃さん?」
まだ痺れの残る下腹部をひくひくと疼かせながら、私は小さく頷いた。
不埒なピアノレッスン【完】
2015/09/19