禁断小説 | ナノ

ヒモ、ときどきエッチ。

「俺、瑠璃さんに捨てられたら行くとこない。金も友達も何もない、生きていけない……」

 そう潤んだ瞳で見つめられたら、ヨシヨシって頭を撫でてあげたくなっちゃう。
 腹を空かせた子犬が目の前でクゥンと鳴いているのに何もしてあげられないなんて。

「……って、だめだめだめだめ! 今日こそ私は心を鬼にするって決めたの……!!」

「えぇ、そんなこと言わないでよ……マジで無理だから、三日で死ぬって。瑠璃さん俺のこと好きじゃないの? 俺、何でもするよ?」

 田舎から都会へ上京してきた暁と出会ったのはかれこれ半年前。寝不足に空腹で行き倒れていたのを助けたのがきっかけだった。
 聞けば財布も持たずに片道の新幹線代を握りしめて上京してきたというが、都会の風当たりの強さに心がポッキリ折れてしまったそうな。
 同情した私は炊事洗濯を条件に彼をアパートに住まわせ、必要な服や生活用品を次々と買い与え、気付けば立派なヒモ男子へと成長させてしまった。

「そうやって暁が泣きそうな顔する度に甘やかしてきた私も悪いけどっ……このままじゃダメになるって暁もわかってるでしょう?」

 鬼の心が揺らぎそうになるのをぐっと抑えて言い放つと、彼はしょんぼりと頭を項垂れた。

「そうだよね……ごめん、わかったよ。俺、ここ出て行く」

「えっ、本当に?」

「うん。でも最後に一つだけ俺のわがまま聞いて欲しい」

「まぁ……一つくらいなら」

 そう答えるや否や、彼は勢い良く私を抱きしめるとそのままベッドに押し倒した。
 降り注ぐキスの嵐を唇で受け止める。
 彼と身体を重ねるようになったのはいつ頃だったか、酔って帰ったある夜、人肌恋しさについ気を許してしまったのがきっかけだったと記憶している。

「瑠璃さん、今日も綺麗。いい匂いするし。香水いつもと違うよね、変えたの?」

「ん……、ぁ……っ」

 甘い声で囁きながら耳朶を優しく噛まれて、ぴくんと肩が上がる。
 あっという間に脱がされた服が無造作にベッドの下へと散る。

「三日もしてないからだいぶ溜まってるんじゃない? 外で他の男とヤッてきたりしてない?」

「してな……、ぁ、んっ!」

 乳首を口に含んで転がすように捏ね回されると堪らず声が上ずった。

「ほんとかなぁ? 俺、結構本気で心配してるのに。瑠璃さんって見かけによらずエッチだから」

「っ、ん……!」

 そんなことを言いながら乳首をきゅっと指で摘ままれて快感が駆け抜ける。
 どんなに甘い言葉を並べたって所詮ヒモはヒモでしかないのに、彼との相性は悔しいほど抜群だ。
 可愛い顔に似合わずSっ気の強いところとか、シャツの裾から覗かせる割れた腹筋とか、長い指が織り成す絶妙なその力加減が最高に気持ちいい。
 独身女のありあまる性欲を満たしてくれる精力はあなどれない。

「瑠璃さん、脚開いて」

「あ……っ」

 片脚を持ち上げられて強引に開かれ、ぱっくりと割れた秘部が露わになる。
 彼はそこに惜しげもなく唇を寄せると、巧みに舌を使って愛撫し始めた。

「あぁっ……! それ、はぁっ……ダメッ……あんっ」

「ダメじゃないくせに。大好きって言いなよ」

チュパッ…チュッ…ジュルッジュルッ…

「や……ぁぁっ、ん……ふ……ッ、ぁ……!」

 たっぷりと唾液を絡ませた舌が割れ目を上下になぞる。
 硬い舌先でクリトリスが押し上げられると悶えるような刺激が背中を走った。

「もう蕩けてきてる。ここ、そんなに気持ちいいんだ」

ピチャ…チュパッ…ピチュックチュッ…ジュルッ…

「はぁっ、あぁ……やだ、そこ、あぁ……んうッ……!」

「嫌なの? そっか、俺、瑠璃さんの嫌がることはしたくないから仕方ないよね、これでおしまいに……」

「い、嫌……っ、やめないで……意地悪、しないで……もっと、して……っ」

 頬を赤らめて懇願する私に彼はクスッと笑みを浮かべる。

「ほらね、やっぱり瑠璃さんはエッチな人だ」

ジュルジュルッ…クチュッ…チュパッ…ピチャッ…

「あぁっ……あん、はぁっ、あう……!」

「こんなに濡れてると指くらい簡単に入っちゃうね」

「ひぁあッ……!!」

 しなやかで長い指が粘膜を掻き分けて奥まで入ってくる。
 溢れる愛液を舌で啜りながら指でくちゅくちゅと中を擦られて身体中が翻弄される。

チュパチュパッ…グチュッ…クチュクチュッ…チュル…

「んんっ、はぁ……! あぁっん……う、はぁっ……あぁっ……暁……っ」

「瑠璃さんの感じてる顔、かーわいい」

 くすくすと笑われて恥ずかしいのに、その吐息がかかるだけで秘部はますます熱くなる。

「は、ぅあ……あぁっ、ぁん……も……イ、イク……ッ」

 爪先から痺れが広がり、腰がビクビクと浮つく。
 視界が真っ白に染まっていくその瞬間まで彼の指が激しく膣内で蠢いた。

「は……っ、はぁ……っ」

 力が抜け、乱れる呼吸を整える。
 その間にも彼はまた口を寄せてくる。

「ぁ……! ちょっ、と……っ」

ジュルジュルッ…グチュッグチュッ…クチュッ…

「い……今っ、イッた、ばっかり……なのっ、んん……! はぁっ……!」

 指を小刻みに動かして膣壁を擦り上げ、唇でクリトリスを挟む。
 敏感になっているソコには刺激が強すぎて脚をガクガク震わせるが、彼は一向に動きを止めようとしない。

「あぁぁっ……暁、はぁっ……もう……ッ、あぁんっ……!」

「最後の夜だから、瑠璃さんの身体に俺の感触を刷り込んでおかなきゃね」

「そんなこと……しなくてもっ……あぁ、んうっ!」

 指と舌を同時に動かし、執拗な愛撫で責め続ける。
 チロチロとクリトリスを転がされたり、ねっとりと舐め回されたり、じゅるじゅると音を立てて蜜を吸われたり……今にも気が遠くなりそう。

「ん、いっ……いい……気持ち、いい……、あぁっ……また……っ」

「またイッちゃうの? しょうがないなぁ。素直になれたご褒美だよ」

「ンあぁぁッ……!!」

 クリトリスを強く吸われた瞬間、再び絶頂が訪れた。
 私は背中を仰け反らせて嬌声を上げ、天を仰いだ。

「はぁっ……ぁ……あ……」

 消えそうな呼吸を繰り返し、ぼんやりする天井を見つめる。
 快感の余韻に包まれたこの時間がたまらなく私を満たしてくれる。

「―――……さん。瑠璃さんってば」

「え?」

「なーにぼけっとしてるの。まだ終わりじゃないよ?」

「えっ……ぇ、あッ……!?」

 力の入らない脚を自分の肩にかけるようにして、彼が臨戦態勢に入る。
 毎晩幾度となく逝かされても、彼はこうして私を離さない。

「俺、瑠璃さんの傍離れたくないな……これが最後だなんて寂しいよ。ねえ、俺を捨てないでよ、瑠璃さん……」

 甘くねだる声で言いながら彼のモノがゆっくりと入ってくる。
 じっくり嬲られ潤ったソコは、太い肉棒をものともせず容易に受け入れてしまう。

「あぁ、暁……はぁ―――!」

 このまま永遠に満たされ続けるのなら……もう一晩だけ。
 そうやって、明日も明後日もきっとまた彼を甘やかしてしまうんだろう。
 離れられないのはもはや私のほうかもしれない。
 この身体がある限り―――。

ヒモ、ときどきエッチ。【完】
2018/01/28

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