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私とあなたの秘密

「ふぅぅ……気持ちいい……」

 湯上がりの火照る身体をひんやりとしたベッドに沈めた。
 一日の終わり。誰にも邪魔されず、自分だけの世界で、妄想に耽る至極のひと時。
 うつ伏せで目を瞑り、ローズの香りが漂う洗い立てのシーツへ頬を押し付けるとつい気持ちが緩む。

「ん……」

 バスローブの裾を軽く捲り上げ、手を忍ばせる。
 茂みをかき分け割れ目にそっと指を押し当てるとそれだけで敏感に反応してしまう。
 こんなにも若々しい身体を持て余して恋人がいないだなんて……私って、可哀想なお嬢様。
 それもこれも箱入りに育てた頑固なお父様のせい。
 まともな恋愛はおろか、未だに本物の男というものを知らない―――。

「ぁっ……、はぁ……」

 いいのよ。こうして毎晩、指で慰めるの。
 それだけで十分気持ちがいい。
 だんだん身体がふわふわして……頭の中が真っ白になって……まるで、男の人に優しく触れられているみたいに……。

「……様、……お嬢様……瑠璃お嬢様……」

 そう……とても甘い声で、ちょっとばかり恥ずかしそうに……何度も私を呼ぶの。
 それから……―――あれ?
 今、確かに誰か私の名前……。

 現実に引き戻されてパチッと目を開けると、ベッドの反対側から申し訳なさそうな顔で佇む一人の影が視界に映り込んだ。

「ッ、暁!?!?」

 思わず飛び起きたが、こう頬を赤らめてあからさまに目を逸らしているということは、つまり……。

「み……見た、のよね……?」

「……申し訳ございません」

 うなだれる執事の姿を前に、かぁっと顔が熱くなっていく。

「へ、変態! だいたい何で暁がここにいるのよ!? 寝ている時は入らないでって言ってあるでしょう!」

「も、申し訳ございません! 電気がついておられたのでまだ起きていらっしゃるのだとばかり……! そうしたら、お嬢様がお布団も掛けずにお休みになられているようでしたのでせめて毛布だけでもと……それで、その、お嬢様に近付いたところ、ええと……」

「も、もういい! それ以上言わないで」

 何かの間違いであってほしいとの願いも虚しく、とどめを刺された気分だ。

「で、ですがっ! 今私が目にしたことは決して口外しないと神に誓ってお約束しますから……!」

「あ、当たり前よっ。誰かに言ってみなさい、二度とあなたにこの家の門をくぐらせたりしないわ! あぁもうっ、こんな辱めに遭うくらいならいっそ死んだほうがマシ……」

「お嬢様、どうかそんなこと仰らないでください! それならば私が今すぐこの腹を切って……」

「ちょ、ちょっと! 冗談に決まってるでしょう? 切腹なんていつの時代よ……もう」

 暁のこの天然っぷりには少しばかり心も救われるが、私のプライドはすっかり傷付いてしまった。
 深く息を吐くと暁がおずおずと申し出る。

「あ、あの、お嬢様……私は、お嬢様に尽くす身です」

「……何が言いたいの?」

「ですから、その……! ッ、少々失礼します!」

「えっ!? ちょっと、暁!?」

 突然身体押し倒され、とても暁のすることとは思えぬ荒っぽさと想像以上の力強さに驚いた。
 鼻先が触れる距離に暁の顔が迫り、肌に吐息がかかる。

「暁っ……なに……」

「私にお任せください、瑠璃お嬢様。このままお休みになられるのはお辛いでしょう」

「っ、ぁ……!」

 バスローブの腰紐が解かれ前がはだける。
 暁の指先が先程自分で慰めていた場所に触れた瞬間、ツンとした刺激が下半身を巡った。

「ああ、お嬢様がこんな風にお一人で慰められていただなんて……」

「あ、やっぁ……はぁっ、だ……めっ」

 言いながら暁の指が巧妙に動き始める。
 人に触られることがこんなにも気持ちが良いだなんて知らなかった。
 自慰とはまるで違う快感に腰がビクンと震える。

クチュックチュッ…チュク…

「んっ、ふ……う……っ」

「感じているのですか? もっともっと、お嬢様を気持ち良くして差し上げますね……」

 折り曲げた脚を左右に大きく拡げられ、大胆に露わになった秘部へ暁が頭を近づける。
 あまりの恥ずかしさに全身が熱を帯び、涙ぐむ顔を両手で覆った。

「み、見ないで……そんなとこっ……」

「こんな綺麗な身体を傷つけるわけにはいきませんから、私の口でご奉仕させて頂きます」

「ひぃっあ……ぁぁっん!」

 にゅるりと這う舌の感触に堪らず嬌声を上げてしまった。
 膣口を硬く尖らせた舌先で突き、じゅるじゅると音を立てて蜜を啜る。

ジュルッ…チュパッ…ピチャピチャッ…

「んんっ、はぁっ……あぁんっ! ぁ、う……はぁっん」

「はぁ……熱くて甘くて……とても美味しいです」

じゅるじゅるッ…クチュクチュッ…

「ひっ、ぁぁんっ……や、はぁっ……! んぅっ……」

 たっぷりと唾液で濡れた舌で割れ目を下から上になぞり上げ一番上まで到達すると、今度はクリトリスを強く吸い上げた。
 再び震えが走り身体が勝手に大きく跳ね上がる。

「ん、ふぅっ……ぁん……暁……そこ……変……っ、びくびく、して……っぁぁ、ふぅぁっ」

「いいえ、おかしなことではありませんよ。女性は皆それぞれ性感帯というものがあるのですから。お嬢様はここを吸われると感じてしまうのですね」

チュパッ…じゅるじゅる…ピチュッピチャ…

「はぁっぁ……! あぁっ、ぁん……はぁう……っ」

 クリトリスを吸いながら、時折膣内に舌を挿し入れ刺激を与えるのを忘れない。
 巧みな舌使いにいつしか全身の力が抜けて激しい快感だけがのしかかってくる。

「もっと私にお嬢様の蜜を飲ませてください……」

「ぁんっ……あぁ、あぅ、はぁんっ!」

ピチュッピチュッ…じゅるッ…クチュックチュッ

「あっ……暁、もう……いい、からぁっ……おかしく、なっちゃう……はぁっ、ぁん……」

「ご安心ください、これは私とお嬢様だけの秘密です。どんなお嬢様も愛らしいですよ」

 舐め続けられたそこが次第にジンジンと痺れ、オーガズムが近づいてくるのが分かる。
 まるで骨の髄まで蕩けてしまいそうなほど気持ち良くて……声が抑えられない。

「ぁぁっ、は、んんっ……! あぁっ、ぁっ、いくぅっ……!」

 一瞬にして絶頂の渦に飲み込まれていく。
 下肢が痙攣し、身体が大きく仰け反り、目の前に眩い光が広がった。

「はぁ……っ、はぁ……」

「いかがでしたか? お嬢様。ご自身で慰めるくらいならば、これからも私をお使いになってくださいませ。身も心も、私のすべてをお嬢様へ捧げます」

「……」

「お、お嬢様……? あの、もしかして私の奉仕はお気に召しませんでしたか……!?」

 今さら慌てふためく暁の様子に小さく笑いが零れた。
 本当は言われなくても私の身体はすっかり彼の虜……私はもう可哀想なお嬢様じゃない。
 だってきっと、本物の男を知れる日はそう遠くないから。

私とあなたの秘密【完】
2016/08/28

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