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……。
………。
「ん……」
目を覚ました時には、もう窓の外は真っ暗。
すっかり酔いも醒めている。
って、あれ…?
私、もしかして……創に抱っこされたまま寝ちゃったの…!?
「あー、もう私のバカバカ、恥ずかしい…!」
他の使用人たちに見られてなければいいのだけど。
創、怒ってるかな…。
急いでベッドから降りて立ち上がり、私は自分の部屋を出た。
◇◆◇◆◇◆
―コンコン…
創の部屋をノックすると、中から「はい」と落ち着いた返事が聞こえてくる。
私は扉を半分だけ開けてちらりと顔をのぞかせた。
「…創」
振り向いた彼は、細い眼鏡をかけて雑務をこなしている最中だった。
あまり見ることのないその姿に、ついドキドキしてしまう。
「おま…!何してんだ、馬鹿か!」
創は私の顔を見るなり、慌てたように立ち上がってこちらへ寄り腕を引いた。
そして私を部屋へ招き入れると、すぐに扉を閉めて言う。
「用事があるなら呼べよ。いくらお前が俺の主人でも、夜中に使用人の部屋を訪ねるなんて誰かに知られてみろ、大問題だぞ。それくらい頭使えよな」
創は大きくため息をついて、険しい顔で私を見る。
「うぅ…分かってるから、そんなに怒らなくても…」
いつもに増して不機嫌な創につい小言をぶつけると、さらに眉間にシワが寄った。
「あぁ?俺はお前のために言ってやってるんだ。分かってるなら、今後二度とここには来るなよ」
そんな風にぴしゃりと言い聞かす創に、私は泣きそうになる。
創の言っていることは間違っていないし、理解もしてる…けど、二度と来るななんて言い方はあんまりよね…。
会いたくないって言われてるみたいで、何か嫌…。
「……はぁ、ったく……何そんなシケた面してんだよ。別に、俺が行くからお前が来る必要はないって言ってるだけだろ。会いたくないなんて言ってねぇよ」
私の心を見透かしたように、創が言う。
だけどそんなの、今さらだ。
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