恋人は俺様執事 | ナノ

p.4

 ……。
 ………。

「ん……」

 目を覚ました時には、もう窓の外は真っ暗。
 すっかり酔いも醒めている。

 って、あれ…?
 私、もしかして……創に抱っこされたまま寝ちゃったの…!?

「あー、もう私のバカバカ、恥ずかしい…!」

 他の使用人たちに見られてなければいいのだけど。
 創、怒ってるかな…。

 急いでベッドから降りて立ち上がり、私は自分の部屋を出た。


◇◆◇◆◇◆


―コンコン…

 創の部屋をノックすると、中から「はい」と落ち着いた返事が聞こえてくる。
 私は扉を半分だけ開けてちらりと顔をのぞかせた。

「…創」

 振り向いた彼は、細い眼鏡をかけて雑務をこなしている最中だった。
 あまり見ることのないその姿に、ついドキドキしてしまう。

「おま…!何してんだ、馬鹿か!」

 創は私の顔を見るなり、慌てたように立ち上がってこちらへ寄り腕を引いた。
 そして私を部屋へ招き入れると、すぐに扉を閉めて言う。

「用事があるなら呼べよ。いくらお前が俺の主人でも、夜中に使用人の部屋を訪ねるなんて誰かに知られてみろ、大問題だぞ。それくらい頭使えよな」

 創は大きくため息をついて、険しい顔で私を見る。

「うぅ…分かってるから、そんなに怒らなくても…」

 いつもに増して不機嫌な創につい小言をぶつけると、さらに眉間にシワが寄った。

「あぁ?俺はお前のために言ってやってるんだ。分かってるなら、今後二度とここには来るなよ」

 そんな風にぴしゃりと言い聞かす創に、私は泣きそうになる。
 創の言っていることは間違っていないし、理解もしてる…けど、二度と来るななんて言い方はあんまりよね…。
 会いたくないって言われてるみたいで、何か嫌…。

「……はぁ、ったく……何そんなシケた面してんだよ。別に、俺が行くからお前が来る必要はないって言ってるだけだろ。会いたくないなんて言ってねぇよ」

 私の心を見透かしたように、創が言う。
 だけどそんなの、今さらだ。

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