p.7
「う、嘘じゃないんだよね……?」
思わず間抜けな声を上げてしまうと鷹斗も少しだけ顔を赤らめた。
「誰がこんなこっ恥ずかしい嘘つくんだっての」
「だって鷹斗、昔から私に意地悪ばっか言ってたじゃん……!」
「そりゃ……好きな女にそう簡単に好きだって言えたら、わざわざこれまで苦労してねーって」
「好きな、女……」
それが自分のことだなんてまだ信じられないけど、でも何だか……すごく気持ち良く心に響いて。
口を開けば心臓が飛び出してしまいそうなほど緊張してるのに、不思議と幸せを感じる。
「ほっ……ほんとにほんと、なんだよね……?」
「おい、お前な……何度言わせる気だよ。つーか冗談で告白なんかするようなガラじゃねーだろ、俺。それとも迷惑だったのか? いきなりこんなこと言って。お前はやっぱり優斗が……」
「違う! そうじゃなくて!」
「……あ?」
「信じられないくらいビックリしてる……けどその、何かよくわかんないけど、すごく嬉しい……っていうか……えっと」
もう、私ってば何言ってるんだろ。
イエスかノーか。ただそれだけの事なのに。
鷹斗の想いを聞いた途端、熱くて熱くて……頭がパンクしそう。
「嬉しいって、マジで言ってる?」
見つめられて視線のやり場に困りながらも小さく頷く。
「私だってこんな冗談言わないから……!」
「だったら……告白の返事、期待していいってこと?」
「……」
あぁ、死ぬほど恥ずかしくて顔も見られない。
何でこんな時ばかり鷹斗がキラキラして見えるんだろう。
今まで散々、優斗優斗って夢中で追いかけ回っていた私が、今さらこんなことを言うのは本当に調子良すぎるかもしれないけど。
でも―――。
「……うん。いい……よ」
今にも消えてしまいそうなか細い声で答え、耳まで真っ赤に火照らせながら首を縦に振った。
「あー……やべ。幸せ過ぎてニヤける。正直ダメかもって思ってた」
安堵の息を吐いた鷹斗が再び私の身体を引き寄せる。
温かい腕に優しく抱きしめられて、私の緊張も少しだけ解れていく。
「お前のことも、ちゃんと幸せにする。俺を選んでよかったってあいつに自慢できるくらいにな」
「……ふふっ」
「おい……何で笑うんだよ。今せっかくイイコト言ったろ」
「だって、鷹斗の口からそんなセリフが聞けるなんて夢にも思ってなかったんだもん」
「これからは毎日言ってやってもいーんだぜ? 何なら、こうやって耳元で」
「そ、それは遠慮しますっ! やっぱり鷹斗の意地悪!」
「ふん、知るかよ。俺はもう待つのはやめたからな。……覚悟しとけよ? 小春」
「っ……」
いつもの余裕を取り戻してニヤリと笑う鷹斗に、私は背筋をピンと伸ばして身構えた。
7/13