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「チッ。何が『鷹斗をよろしくね』だっつーの。おい、小春。お前大丈夫……って、おい!?」
優斗と彼女の姿が見えなくなった途端急に全身の力が抜けて。
ケーキの箱は勢い良く地面に落ち、身体はヘナヘナと崩れ座り込んでしまった。
「大丈夫か? 小春?」
鷹斗が隣にしゃがんで心配そうな顔で覗き込む。
いつになく優しい眼差しに見つめられて、自嘲気味に笑ってしまう。
「私、馬鹿みたい。何も知らずに一人で優斗のこと追いかけ回したりして。鷹斗はずっと知ってたの?」
「いや……俺も今朝初めて知った。もっと早く気付いてりゃ、こんな形でお前を傷つけたりするかよ」
「えっ……」
傷つく?
私、傷ついてる―――?
ううん、さっきはものすごく驚いたけど。すごくすごーくショックだったけど。
でも……全然傷ついてない。
ほら、涙も出ないもん。
「好きだったんだろ? ずっと。あいつのこと」
好き……、だったのかな。
それさえもよくわからない。
長い夢から覚めたみたいに、もう興味すら失せてしまったような……そんな気分で。
「憧れだったのかなぁ。考えてみたら、優斗と一緒にいる時間は本当に幸せだけど……ドキドキしたこともないし。あぁ……やっぱり私って馬鹿だ。恋なのかもわからないままひたすら夢中になってたなんて」
「ああ、バカだな。救いようのないバカだ」
「な、何もそこまで言うことないでしょ!」
「けど……別にいいんじゃねーの。俺はそういうお前、嫌いじゃねーし……」
「……それってどういう意味?」
思わず聞き直すと、鷹斗は視線を外してプイッと横を向く。
「……そのまんまの意味しかねーだろ」
そう呟いた鷹斗の横顔はほんのり赤く色づいていて。
何だか私まで火照ってしまう。
「そ、そういえば鷹斗……! さっきはその、助けてくれてありがと……」
「……なんだよ急に。つーかお前、いつまで人ん家の前で座ってるつもりだ。立てるだろ?とりあえず上がれよ。……ほら」
差し出された鷹斗の手を何気なく握る。
と、一瞬大きく鼓動が高鳴った。
「あ、あれ……?」
今、心臓がドキッって……言った?
「ん? 何だよ?」
「え、あ、ううん! なんでもない!」
「はぁ? 変なやつ」
あれれ……なんだか頬も熱い。
ぴりぴり電流が走ったかのような……不思議な感覚。
私、熱でもある……?
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