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週末、私は鼻歌交じりに優斗の家へと向かっていた。
「ふふ。喜んでくれるといいなぁ」
手にしている白い箱の中には、ふわふわの生地にたっぷり生クリームを乗せて真っ赤なイチゴをトッピングした優斗の大好きなショートケーキ。
今日は部活が休みだって聞いてたから、一緒に食べようと思って朝から張り切って作ったのだ。
ピンポーン
何の躊躇いもなくチャイムを鳴らす。
ものすごい勢いでバタバタと駆けつける物音が家の中から聞こえてきたと思えば、開いた玄関から顔を出したのは……優斗じゃなくて。
「お前、何しに来たんだよ!? はぁ……、はぁっ……」
余程慌てていたのか息が軽く上がっている。
そんな鷹斗の姿に私は怪訝な目を向けた。
「何しにって、鷹斗に用があるわけじゃないよ! 私は優斗に会いに来たの。だから入ってもいいでしょ?」
いつものように上がり込もうとする私の肩をぐいっと鷹斗が押して止める。
「だめだ。あいつなら今出かけてる。だから、今日は帰れ」
「ウソつき! だってそこに優斗の靴あるもん」
「靴なんかいくらでも持ってるだろ。いねーもんはいねーんだから、ほら。帰れって」
「ちょ、ちょっと!? 押さないでよ……!」
私の言葉を無視して強引に追い返そうとする鷹斗の腕を掴む。
と……そこへ。
「鷹斗。また小春に乱暴してるの? かわいそうに」
聞き慣れた声が家の中から聞こえてくる。
「……。……はぁ」
眉間にしわを寄せて深いため息をつく鷹斗。
そんな鷹斗を横目に私はパッと輝かせた。
「優斗! 何だ、やっぱりいたんじゃん。全く鷹斗は嘘ばっか……、」
そこまで言いかけて、ピタリと足が止まった。
優斗の後ろからひょっこり顔を覗かせる一人の女の子にすっかり目を奪われて。
まるで凍りついたかのように一歩もその場を動けない。
思わず大きく開いた口を塞ぎ、その光景に息を呑んだ。
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