雨が嫌いな女の子と郁



「いや、だなぁ」
何気なく彼女が呟いた言葉にどきりとした。
普段は賑やかなこの教室も、今は僕達ふたりしかいないからとても静かだ。そのせいかやけに声が響き、彼女の些細な一言でさえも反響する。
ひょっとして、彼女は僕と二人きりでいるのが嫌なのだろうか。そこまで考えが及んだところでそれはないと否定する。確かに彼女にたくさん意地悪はしたけれどそれは愛ゆえであって。第一、僕たちは教師と生徒のまえに恋人同士なのだ。イヤだなんてそんなこと──。

「いやだなぁ」
ため息とともに再び吐き出された言葉に彼女の方を見れば、こっちじゃなくて頬杖をついて外を見つめていた。僕も彼女に倣ってそっちを見る。
外では雨が、降っていた。
「…あぁ、雨が嫌なの」
こくりとこっちを見て頷いた彼女にホッと胸を撫で下ろした。
あぁ、でも彼女はどうして雨が嫌いなのだろうか。
「だってね、靴が濡れるし、部活は中止になるし。こうも昼間から薄暗いと気が滅入るし…」
まるで僕の疑問を読み取ったみたいに彼女は雨が嫌いな理由を挙げていく。
「…あとね、」
「ん?」
「郁とデートが出来ない、し」


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