荒北にペディキュアを塗ってもらう

剄r北にペディキュアを塗ってもらう


 リビングに戻るとカーペットの上で真剣な顔をして、ペディキュアを塗るアイツがいた。夏だってサンダル履くときくらいしか塗らねェアイツが、一所懸命塗っているのが珍しくて後ろからのぞき込む。塗っていたのは、チェレステに近い、水色。 「ひゃっ……なんだ靖友かぁ」「オレ以外誰がいンだよ」そりゃそうだねと苦笑して、またペディキュアを塗り始めた。
「キレーな色だネ」
「靖友のビアンキの色に似てるでしょ?思わず買っちゃったの」
 右足の人差し指を塗終えてから「手はもう塗ったんだー」と得意げな顔で差し出した。 両手十本の爪が、俺のロードと同じ色に塗られている。嬉しいような、なんだか複雑な気分だ。自分のロードと同じ色。福チャンに譲ってもらった、ビアンキによく似た、チェレステみたいな色。鼻歌を歌いながら爪を塗るコイツに無性に腹立たしくなって、首筋に噛み付いた。
「いっつ!ちょっと靖友!」
「クセぇ」
「しょうがないよ、マニキュアだもん」
 舌打ちすると困ったふうに眉を下げる。
「終わったら換気するからさ」
「……ン、早くしろヨ」
「はーい」
 コイツの肩に顎を乗せて足マニキュアを塗っていくのを眺める。丁寧にムラなく塗っていく。
 ふと脇に置かれてるチェレステカラーのボトルの横に透明のマニキュアのボトルがあってなんとはなしに手に取ってみる。

「コレなにィ?」 
「トップコートだよー。仕上げに塗るやつ」
「ふゥん……それ俺がやってもイイ?」 
「靖友が?いいけど、はみ出さないでよ」
「オウ」

 コイツがやっていたみたいに刷毛についている余分なマニキュアを落として、塗り始めた。初めに真ん中を塗って、それから両端を塗っていく。特に親指を塗るのが楽しかった。乾いたチェレステカラーの上に刷毛を滑らせる。はみ出さないように気をつけながら、一本ずつ塗っていく。……これはなかなか気分がいいかもしんねぇ。
 しっかしつむじに感じる視線のせいでイマイチ集中出来ない。
「……靖友、塗るの上手だね」
「そうかァ?」
「うんすごくうまい。今度から靖友に頼もうかなぁ」
「そんときゃァ全部やらせろヨ?」
「手も?」
「ったりめぇだろ。オラ次、右足寄越せ」
「はーい」



2014.11.19.

[] []



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -