一くんと情事の後



事後特有のけだるさに、枕に顔を埋めて微睡む。汗を流したいとか、そんな事はどうでもよくて、早く眠ってしまいたかった。それくらい、疲れた。焦らしながら丹念に愛撫され、何度も最奥を突かれて啼かされ、彼が満足するまで、繰り返し、何度も。絶倫だと告げられたときにある程度予想はしていたけど、ここまでとは思っていなかった。
ドアが開く音がしてそっちを見ると、風呂上がりの一くんがいた。髪が首に張りついているのが、少し艶っぽい。彼がベッドに腰掛けて、ギシリ、とベッドがなく。
「身体は大丈夫か?」
散々抱き潰したのに、こちらを気遣う彼が少しおかしくて吹き出す。彼が眉を寄せた。
「大丈夫だよ。ありがとう、一くん」
そうかと言って彼が目許を和ませる。頭をそっと優しく撫でられるのが心地よくて、また微睡みはじめる。一くんが頭上で、くすりと微笑んだのが分かる。一くんが微笑むことはあまりないから、貴重なのに。目蓋を開けようにも、重たくて上がらない。そうしてるうちに、意識は白に、包まれた。





すぅ、と寝息を立てはじめた彼女に、自然と頬が緩む。普段や、さっきの情事の際に見せるのとは違った、幼さの残る寝顔が愛らしい。今日もまた、無理をさせたんじゃないかと問うと、彼女はひとしきり笑って、それから大丈夫だよと言った。正直なところを言えば、この体質のせいで別れたこともあるから不安だった。だが、彼女とはかれこれ3年も続いている。
彼女の気取らない彼女の性格が好きだと、心底思う。いつだって真っすぐで、嘘偽りがないから、一緒にいて心地よい。いつだったか、酒の席で、彼女に将来を共にしたいと言ったときは曖昧に濁されてしまった。だから今度、素面のときに、言おうと思う。そしたらあんたは、なんと言うだろうか。
彼女の頬にかかっていた髪を耳に掛けてやる。彼女がたじろいで、体制を変えた。その隣に、俺も潜り込んで一緒に眠る。換気のために開けた窓からから、花の匂いがした。


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