錫也と約束する

私を見つけて。

星を見たい。
そういった私に、錫也は優しく笑った(しかしその笑顔は哀しげだった)。


「此処からでも星は見えるだろ?」「外で、見たいの。お医者さまの許可ならとってあるわ」
お医者さまが、と錫也はかるく目を見開いた。そして、渋々ではあるが私を外へと連れ出してくれた。
多分、私はもう永くはない。お医者さまは、此処まで持ったのが奇跡だとおっしゃっていた。
星を見るのは、これが最後だろうか。そう思うと、寂しくて、切なくて……胸が張り裂けそうだった。
私は昔から身体が弱く、錫也達と共に高校へと行くことは叶わなかった。けれど、錫也達がお見舞いに来てくれる度に星の話をしていたから寂しくはなかった。
今日は大晦日だった。
その所為か、道路は思ったより空いていて予定よりやや早く目的地につくことが出来た。
「おおー、星がよくみえるなぁ」
「こーら、暖かくしなきゃだめだろう」
そう言って、錫也は私にマフラーを巻いてくれた。
「ねぇ、錫也。あれはなんて星?」「あぁ、あれはなぁ──」
錫也が、あれはなんて星でと教えてくれる。夜空には沢山の星達が輝いていて、とても憶えられそうにない。これをすべての季節のを憶えているのだろう錫也はすごいと思う。
「そしてあれが」
「知ってる。オリオン座だよね」
あぁと錫也は頷いて、よく覚えてたなと私の頭を撫でた。胸のあたりがぽかぽかする。錫也に頭を撫でられるといつもそうだった。
「ねぇ、錫也。死んだら、星になれるかな」
錫也が、息をのんだのがわかった。
「私ね、もう永くないと思うの。ねぇ、私が死んだら探してくれる?きっと星になるからさ」
「な、に言ってるんだ。お前はっ「錫也、約束して」
酷いことを言っていると、分かってる。分かってる。でも、私がもうすぐ死んでしまうのはきっと本当だから。
「……分かった」
苦しそうな、顔をしていた。罪悪感が胸をよぎる。
「ありがとう。錫也」


私を見つけて
(きっと私は星になるから)(だからいつか必ず見つけてね)




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