H.kotoro
いつもどおりの夕食。
片付けを手伝おうと立ち上がると、止められた。にこにこと笑いながら、「ちょっと待っててくださいね」と言われた。
「じゃーん!東月くんに教えてもらったレシピで作ってみました!」
「ケーキ?」
「琥太郎さん、お誕生日おめでとうございます」
そう言って目の前のこいつが微笑んだ。
誕生日だなんてもう祝う年でもないよなどと直獅たちの前では言ったが、こいつを目の前にするとそんな考えはたちまち消えてしまう。いくつになっても祝ってもらえるのは、やっぱり嬉ものだ。俺も彼女につられて笑う。
「ありがとう」
幸せだと心底思う。まさか自分が誰かを好きなって家庭を築く日がくるとは思っていなかった。
本当に幸せだ。
141013