魔女がかけたのは恋する魔法 ※≠絵麻 どきどきしながらピンポンを押す。デートに誘うときもすごくどきどきするけど、今日のどきどきはちょっと違う。ほんの少しの緊張と、あとはイタズラをするときのわくわくする気持ち。 はい。と雅臣さんの声が聞こえて、名前ですと応えるとすぐにドアが開いた。 「どうしたの、平日に来るなんてめずら……し……」 「trick or treat!」 私の格好を凝視して固まった雅臣さん。そんなに変な格好はしてないつもりなんだけどな……。魔女のコスプレに、いつもは結わいてる髪を下ろして緩く巻いただけだ。 「雅臣さん?」 「っああ、うん。お菓子か悪戯か、だったね。ちょっと待ってて」 ポケットを探る雅臣さん。だけどそのポケットにもうお菓子がないのはリサーチ済です! ないなぁと雅臣さんは言って、それから部屋に戻ろうとした。ストックがあるんですね。だけど残念! 「non、今無いなら悪戯です!」 ドアノブを掴む彼の腕を支えに背伸びして、唇の端っこにちゅうをした。この間、私をこども扱いしたその仕返しのつもり。私だっていつまでもこどもじゃないし、あと3年もすれば成人だ。 「……今日は、ずいぶんとおませさんだね」 「私がこどもじゃないって雅臣さんに知ってもらおうと思いまして」 にっこり笑うと、雅臣さんは目を泳がせた。こないだは、色々タテマエを並べられて断られた。だけど、私は諦めたくないの。雅臣さんが好き!この気持ちに嘘偽りはないし、だからタテマエじゃない雅臣さん自身の言葉が聞きたかった。 「私はもう結婚だって出来るし、来年には高校も卒業します。雅臣さん。私、いつまでもかわいいこどもの名前ちゃんじゃいられないです。私、雅臣さんが好き。大好き。年齢差とかそんなの関係ない!雅臣さんの、本当の気持ちを聞かせてください」 魔女がかけたのは恋する魔法 ずっとこどもだと思っていた。 まだ小さな頃から知っていたし、勉強を見てあげたりなんかもして、彼女を妹のように思っていた。 だけど彼女は、いつのまにか「こども」では無くなっていた。 少し背伸びした服装も、ちょっとした仕草にドキリとするようになっていた。 「こども」だと思っていた女の子は、いつのまにか「大人」になろうとしていた。 彼女が俯いてしまった。帽子の鍔のせいで彼女の顔は見えない。だけど、マントを握り締める手は震えていて 「僕も、君が好きだよ」 最初は梓さんで書いていたのにいつの間にか雅臣さんになってた。解せぬ |