おばけだらけの愉快な舞踏会


(名前→鷹→撫)


ノックをすると、中から小さな返事が聞こえて名前はドアを開けた。
「こんにちは、撫子さん。体調はどうかしら」
「名前さん!こんにちは。体調はだいぶよくなりました。ありがとうございます」
「そう、よかった」
撫子はそれまで呼んでいた本に栞を挟むと名前に向き合った。その顔つきは少し緊張しているようで名前はちょっと申し訳なくなった。
キングとビジョップくん、ルークみたいに私は『2010年』の彼女とはまったく関わりが無いから、警戒されてるのかも知れないなぁと名前は思った。もう此方にきて一月は経つのだし、そろそらなれてくれてもいいとおもうのだけど。
「今日はね、あなたにお願いがあってきたの」
「お願い?」
「えぇ」
頷きながら、名前は紙袋を撫子に差し出した。














昨日からやっている書類作業はやっと山がなくなりつつあった。浮かれていたとはいえ、ちょっとこれはないなと鷹斗は自嘲した。
彼女ばかりを見ていて、他が疎かにいるようでは自分が作りたい世界は作れない。撫子には否定されたけど、それでも鷹斗はあきらめるつもりはなかった。もう誰も悲しまない世界──夢物語ではなく、今実現しつつある世界。
鷹斗は伸びをしたついでにすっかり冷めたコーヒーを一口飲んだ。
不意にノックが聞こえて、鷹斗はどうぞと応えた。


ドアから覗いた彼女の姿に、鷹斗は思わず見とれた。
クラシカルなメイド服姿、普段は下ろされている髪はツインテールに結われていた。ほっぺたは少し赤い。普段なら決して着ないような服だからだろうか。
「──ど、どうしたの?撫子」
彼女は台車を押して鷹斗のそばまで行くと、ティーポットからカップに紅茶を注いだ。
「ハロウィンだからって名前さんに頼まれたのよ。お菓子とかは名前さんが用意するから、あなたとお茶してあげてって」
本当にそれだけよ、と撫子は早口気味に念を押すと名前の机の椅子をひっぱってきてそこに座った。
「仕事は少し止めて、私とお茶しましょう。鷹斗」











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