侑介とおしゃべり
俺の従姉の姉ちゃんは、ちょっとマイペースだ。琉生にぃもマイペースだけど、姉ちゃんは別にそこまでマイペースでも頑固でもない。ただちょっと時間にルーズで、いつも自分のペースで動いている。マイペースというよりはのんびり屋さんという言葉のがあってるかもしれない。
さっきようやく姉ちゃんが帰ってきた。京にぃから姉ちゃんへのお説教が、偶然リビングに居合わせた俺にまで聞こえてきた。時計を確認すると、十時半過ぎだった。時間にルーズな姉ちゃんだけど、これまで門限はしっかり守っていたからちょっと意外だった。珍しい。
しばらくすると声が止んで、京にぃがお弁当箱を持って戻ってきた。お説教は終わったらしい。
玄関の方に行ってみると、姉ちゃんがまだいた。
「姉ちゃんおかえり」
「ただいま。侑ちゃん。まだ起きてたんだ」
「そろそろ寝るよ。姉ちゃんは?」
「私も。明日も早いから」
そう言って姉ちゃんが苦笑した。
靴を履いてそとに出る。長袖一枚じゃ寒くて思わず身震いした。エレベーターのボタンを押すと、すぐにドアが開いた。姉ちゃんと一緒に乗り込んでボタンを押した。
「あ、そうだ。これ。間違えて俺んとこ入ってたぜ」
「ポストカード?……あ、ひかにぃからだ。今イタリアだって」
すごいねぇ。と姉ちゃん。
ひかにぃは上から四番目の兄ちゃんで作家をしている。何冊か本を出してるけど読んだことはない。よくわからないけど、ノワール小説というの書いてるらしい。
エレベーターはすぐに止まってドアが開いた。俺も姉ちゃんも降りるとドアが閉まって下へ下っていった。
「姉ちゃんってひかにぃの小説読んだことあんの?」
「一冊だけかなにぃに借りて読んだよ。おもしろかった」
「ふーん」
そうこう話をしているうちに、姉ちゃんの部屋の前だった。うっかり自分の部屋を通り過ぎたらしい。
「おやすみ、侑ちゃん」
「おやすみ、姉ちゃん」
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