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診断メーカーを元に書いた140文字のお話。夢だったりオリジナルだったりいろいろです。





薄桜鬼/風間夢
2014/12/08 00:58






「ここで死んだのね」

土方が頷くと、彼女は一言「そう」と相槌を打った。それから桜を見上げた。もう春は過ぎ去り、桜の木には青々しい若葉が生い茂っている。
目を閉じれば、鮮明にその時を思い起こせた。信念のために歩み続けてきた、その最後には風間との戦いがあった。桜の木の下で。死ねないと思いながら、死ぬと思った。剣を交えるたび、感じるものがあった。それがなんだったのか今となってはわからない。ただ、アイツは鬼で、俺は紛い物で、負けられない戦いだった。憎まれていたなんてものではないだろう。もっと違う思いが風間の中にあったと思う。俺がそうだったように。

「あの人ね、歩くの早いから、私、いつも置いてきぼりだったのよ」

桜を見上げる彼女のほおを、一筋の涙が滑り落ちた。

「いつも一人で先に行ってしまうの。私は後を追うばかり。……あの人の隣に立てたことなんて、一度だってない。千鶴ちゃんが羨ましい」
「……俺も、アイツを置いて歩くばかりだった」
「一緒にいてあげてね」
「テメェに言われなくてもいるさ、死ぬまで放さねぇよ」

クスクスと彼女が笑うのが、なんだかこそばゆくて、そっぽを向いた。ガラじゃないことを言った自覚はあるが、土方の本音だ。

「あの人の最期を教えてくれてありがとう。後は、一人にして欲しい」
「帰りは大丈夫か」
「……うん、大丈夫」

そうか、と頷いて土方はその場を後にした。
自宅へと帰る道すがら、風間の女だと名乗った彼女の後ろ姿を思い出した。美しいぬばたまの黒髪に、白い素肌。真っ直ぐな瞳は、紅い色をしていた。手は少しの荒れていて、剣だこが少しあった。風間に追いつこうと練習を積んでいたのかもしれない。風間はいけ好かないやつではあったが、その女はなかなかに好感の持てる人物であった。
家へ帰ると、不安そうな顔をして千鶴が駆け寄ってきた。無事な姿を見て、ほっと肩を下ろす。土方がただいまと言うと、千鶴がお帰りなさいと言う。土方は満ち足りた気持ちで、千鶴を抱き寄せた。






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