加糖様◆20万HITフリー

加糖様◆20万HITフリー


手錠な2人


ガシャン!

私の手首に銀色の金属。

「はーい、おまわりさんの心を傷つけた。公務執行妨害で逮捕ー。」

うららかな午後の昼下がり。
公園にやってきた私は実にくだらない理由で、宿敵に手錠をはめられた。

「サボってるヤツにサボってるって言って何が悪いアル!」

「おまわりさんの心はボロボロなんでィ〜。」

飄々と言ってのけるアイツに私はカチンときた。

「ふじょぼーこーアル!早く外すヨロシ!」

「やーなこった。」

そう言ってもう片方の手錠をアイツは自分の手首にした。
あーもうやってらんない。
こんなヤツに捕まるなんて。

とそんな時に下腹部に走る違和感。

なんでこんな時にこんな事が…最悪アル!

「うう…トイレ、トイレいきたいアル…」

お腹が急降下。
もしかして朝の卵掛けご飯の卵が古かったような気がしてきた。

「んな0秒でバレる嘘なんかついても無駄でィ。」

「…ご、ごっさトイレ行きたいアル…嘘じゃないネ!」

「まじでか。」

顔面蒼白な私を見てアイツは疑いをやめた。

「ああ!もう無理アル!!」

ダラダラと汗が吹き出てきた。
私は、涙目でアイツに訴えかける。

「ここでウンコしてもいいアルか?」

アイツは、ポカーンと鳩が豆鉄砲打たれた顔。
そういえば、前に逆のことあった事を思い出したけど、今回はマジなのだ。
フェイクであればどれだけいいことか。

「うおおおお!!もう出る出る出産するネ!!」

中腰で耐えているけどもう無理。
屈もうとした時、私の身体はアイツに横に抱えられ、トイレへと直行。
迷わず男子トイレの個室に連れ込まれた。
二人顔を見合わせて、無言でお互い頷く、それだけのやり取りだった。

ジャー…

用を足した私は大のレバーで汚物を流す。
公衆トイレはもともと清掃が行き届いてないから、この異臭が自分のものだけか分かりかねない。
無言でトイレに入り、無言でトイレから出てきた私たちはベンチに腰掛けた。
その間誰ともすれ違わなかったのがせめてもの救いだった。

ああ、空ってこんなに青かったっけ。

「生理現象アル。誰にでもある生理現象アル。オマエもそう思うダロ?」

「ああ、まぁな。」

「なんでちゃんとトイレに連れていってくれたアル?オマエのクソサド性格ならその場でしろって言うと思ってたアル。それに今だって何も言ってないアル。変アル。もっと罵るんじゃなかったのカヨ。」

「人前で堂々と平気でウンコとか言っても全然恥ずかしがらねェ奴にそういうことさせても意味ないんでね。」

「それもそうアルな。」

「あーなんか疲れた…。」

「私もネ…って元々の根源はオマエアル!こんな手錠なんかするから…、」

「うるせーなー。わーったよ、今鍵外すから…あり、どれだっけ?」

アイツは隊服の懐をガサゴソと探り始めると、鍵の束を取り出した。
ジャラっと懐から出したそれに目をしかめている。
そうこうしていると、私達の前にトッシーが現れた。

「よう、総悟。困ってるみてーだな。俺が見てやっから貸せ。」

「やたら親切で気持ちわりー土方さん、はいどうぞ。」

アイツは鍵の
トッシーは周りを見渡すと植え込みの中に声を投げた。「なぁ、万事屋。これどうする?」

"バレた?"とばかりに銀ちゃんがその植え込みから出てきた。いつからいたんだよコノヤロー!
もしかして…いやいや考えるのはやめておこう。
とりあえずクタバレ、クソ天パ!

トッシーはその鍵の束を銀ちゃんに手渡した。
銀ちゃんはニタリと笑う。
私は寒気がした。
そういえば、銀ちゃんがトッシーとアイツに手錠させられ最悪な1日を過ごしたって聞いたことを思い出した。

「さーどうするもなにも、なぁ、副長さん?」

銀ちゃんとトッシーは顔を見合わせて私たちをジロジロ見た。
銀ちゃんは鍵を人差し指でクルクル遊ぶ。
まるで手錠をした私たちの運命は銀ちゃんに握られているかのよう。
ああ、そんなことせずに早くこの手錠外してほしいよ。

「これを機に、お前らケンカばっかしてねーでちったぁ仲良くなれよー」

ぷぷっと付け加えるように笑った銀ちゃん。

「銀ちゃーん…いい加減にするヨロシ!」

「旦那ァ、冗談も程々にしてくだせェ。」

「総一郎くん、俺はそこまで悪じゃないぜ?」

銀ちゃんからトッシーへと鍵が返却され、私はホッと一安心。
これで解放される。

「総悟、チャイナ娘…今外すから待ってろ。えーと…」

「あ、やべ…、」

ジャラジャラさせて鍵を探すトッシーにアイツの声。

「今思い出した…この手錠の鍵、屯所に置いてきちまった…。」

「「「えー!!!」」」

公園に落胆の声がこだました。

手錠をすぐに外せない私たちは目的地もなくぶらぶら街中を歩いて暇を潰してる。
もっとも、肝心な鍵は屯所で目下捜索中らしい。

「手錠痛いアル…。」

アイツから半歩遅れるように歩いてる私だから、そうなってた。

アイツは立ち止まった。

「じゃあ、こうやったら痛くないだろィ?」

ジャラっと手錠の鎖が動いた。
アイツは私の手をつないだ。

「はっ恥ずかしいアル…」

だってつないでるのは手錠だけじゃなくなってる。
"恥ずかしい"なんて乙女ちっくに反応してしまった自分にちょっとビックリ。

「じゃ、離す、」

手をパッと離したけど、その手を今度は私からつないだ。

「やっぱ、これでいいアル…」

アイツの手、ゴツゴツしてて、やっぱ男なんだなって思った。
って私ってばまたなんでこんな事考えてるんだろ。

「疲れたアル、どこかで休みたいネ…。」

「じゃあ休憩していきますかィ?」

なんだいい提案するじゃん。
トボトボ前も見ずに歩いてて、到着を言われて見上げたらビックリ。
ラブホの前でした。

「お前何考えてるアルか!コココ…ココが何処か分かってるアルか!」

「休憩してぇっつったのオメーだろ?何ぎゃあぎゃあ騒いでんでィ。」

「嫌アルーッ!こんな処、お前なんかのクソガキと入りたくなりアルー!」

「アホかよ。俺がオメーなんかにその気起こすワケねーだろ。」

「う…、そ、それもそうアルナ!」

「…それともして欲しいのかィ?」

「インモラルアル!そそそ、そんなこと断じてナイ!ナイ!」

「兎に角、俺ァ早く横になりてーんでさァ、さ、行くぜ。」部屋に入った私たち。
アイツはこう言った。

「手錠の鍵が見つかるまでココで待機ってことで、分かったな?」

「う、うん。分かったアル。」

つまりは、待機ってことか。
ここ(ラブホ)にいれば、誰とも遭うことはない。
つまりは、公衆の面前でこんな状態を人に見られないように配慮してくれたってこと?あ、でもここに入るの見られてたら意味ないことだけれども。

そうこう考えてるとアイツはベッドに寝転がった。
自然と私もその隣に寝転がる。

いよいよベッドの上に上がってしまった私たちだが、そんな予定などない。

でも、ここはそういうことをスル空間で、私たちは一組の男女で、実はさっきからドキドキしっぱなしな私な訳で…あ、なんか考えるのダルくなった。

自然と湧いて出た感情に身を任せた。
寄り添い囁く。

「沖田、抱いて。」

「…ああ、」

片っぽの手は手錠でつながれたまま、私たちは身体を重ねた。
思ってたより甘い一時だった。
アイツの全部が優しく私にふれた。
アイツを受け入れる、というより、アイツを私が捕まえるという初めてのセックスだった。

「魔がさしたアル…魔がさしただけアル…。」

ゴソゴソっと私は布団を自分の上に被せて隠れた。

「魔がさしてスルことでもねーだろ。」

「いいか、このことはもう忘れるヨロシ。私も忘れるから、分かったナ。」

隠れたままでそう言って、しばらく沈黙が続く。
バサッと布団がどけられたと思えばアイツは真顔でこう言った。

「好きだ。」

何かがやっとはじけた気がした。
でも、それに驚いた私は布団をまた被った。

「チャイナ、おい、チャイナ、」

アイツはまた私から布団を剥ぎ取った。
私は裸体をアイツと反対の方へと隠すように丸まって目をぎゅっと閉じる。

「聞いてんのかコラ。こっち向けィ。」

アイツの手が私の肩に置かれぐいっと引き寄せかけられて戻される。

「あー今の無し無し。…なァ、頼むから無反応だけは止めてくれィ。それが一番堪えるんでィ…」アイツは私の肩に頭をのっけて落ち込んだみたい。
肩に当たってる唇が熱いよ。

そして、そのままポツリと言う。

「すまん、チャイナ。」

「ううん、嬉しいから許すアル…、」

「俺もすげー嬉しい…ずっと、ずっとチャイナの事だけ想って、ずっとずっと…、」

「く、苦しいアルよ…、」

後ろから強く抱きしめられた。
胸が詰まる。
そうして恐る恐る唇を重ね初めての口づけが成された。

屯所からの連絡が遅いと思って、アイツから連絡入れたら、もう鍵は見つかっていた。

結局、最近アイツがスマホに機種変したから、現在地通知アプリで私たちの居場所はバレていたみたいで…、まさに嬉し恥ずかし初体験になっちゃった。

無事手錠は外されたけど、 手をつなぐ度に思う。

"大好きヨ"

*********





"ニッチ"の加糖様より
フリー小説を再び奪取して
参りました!!
何度奪取するつもりなんだと
ツッコこまれそうですすみません。

手錠とかもう沖神の
必須アイテムですよね(違う)
痛いから手を繋ぐなんてもう…!!
このツンデレめ!←
こんな萌え小説がフリーだったら
奪取するしかないでしょ(b^∀゚)
いつもありがとうございます!!

20万HITおめでとうございます!!!


BACK


≪ TOP 





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -