屡音様◆相互記念小説

屡音様◆相互記念小説


「曖昧センセーション」



「頼むっっ!!ちょっと屯所まで来てくれ!」


「…え?」

万屋の居間のソファーではなぜか多串君が私たち万屋一行に頭を下げている。
流石の銀ちゃんもそんな多串君の様子に驚いているようだ。


「ちょっと土方さん、顔を上げて下さい。一体何ですか?プライドの高いあなたが頭を下げるなんて…」


「実はだな、総悟のやつ…記憶喪失なんだよ……」


「「「えぇっ!?」」」


「情けないことにな」


またあのサドヤローが記憶喪失なんて…


「なんで記憶喪失になったアルか?」

「確か桂一派がいるって通報があってな。乗り込んだ際に煙幕にやられたんだよ。その煙幕が原因らしい。まぁ効力は永久ではないそうだが、一ヵ月はかかるんだとよ。」


なるほど。


「じゃあ一ヵ月待てば?」


銀ちゃんそんな身も蓋もないようなこと…


「そんなに待てるわけねぇだろ!!今のアイツは使い物にならねぇんだよ!」


「んなこと言ったってそういうもんなんだろ?どうしようもねぇじゃねぇか」


「それが対象者と縁の深いやつ、あるいは印象に残ってるやつとか会うなりなんなりすれば戻るんだとよ。要はきっかけがいるってことだ」


3人で顔を見合わせる。断る理由がないので屯所に行ってみることにした。


「そのかわり報酬は弾んでもらうけどな。」




********



「…来たはいいけどさ、ぶっちゃけ役に立たなくね?おたくらで無理なら俺らも無理だろ」


確かに屯所に来たはいいけどその通りな気がする。


「そりゃそうだけどこっちだって藁にもすがる思いなんだよホントに!!まぁ切り札もあるんだけどな」


切り札って?
なんかこっちをちらって見てきた。



「…よく考えたら身内に沖田君にとって印象強そうなのいるしね。なんとか報酬貰えそうだな」


「そうですね。どっち道僕ら来なくていいですよね。一応って感じで」


皆こっちをちらって見てくるのがウザい。


「一体何アルか!なんでそんなちらちらちらちら見てくるネ!切り札って何だヨ!私だけ除け者か!?」


皆はすぐに目を逸らして何も言わなかった。
え?私なんかしたっけ?


「…とりあえず俺は総悟呼んでくるわ」


多串君は逃げるようにそそくさと中に入って行った。他二人も目を合わせない。
…気にしても無駄かも。


そうこうしてると中からサドが出てきた。

いつもとは違って挑発的でもないし、ドSな感じもない。私たちを見てキョトンとしている。


「総悟、この中で見覚えのあるやついねぇか?一緒にどこでも行っていいぞ。有給やるよ」


「え?どこでも、ですか?」


おぉ!正しくサドじゃない!多串君に真面目に敬語なんてありえんアル!!


「……」


考え込んでいるサド。

そりゃそうダロ。いきなり見たこともない他人とどこかなんて。やっぱり
一番はゴリしかない…


あれ?なんかこっち見られてる?私?この中で最も印象の薄そうだけど?


「じゃあその子」


「えええええええー!!?」


まさかとは思っていたけど、本当に私が指名を受けるとは…。

困って銀ちゃんを振りかえると、いつにもない爽やかな笑顔にキラリと歯を出して親指を立て、無音で「行ってこい!」。助けにならないことを瞬時に悟った私は新八を振り返っても、銀ちゃんとほとんど同じだった。ただ少し苦笑いだけど、助けてはくれなそう!


「えっとだな総悟、コイツは…」


「知ってまさァ。神楽。俺はチャイナって呼んでましたよねィ?」


「「「おぉ!!!」」」


なんでだあああああ
ていうか元々コイツって私の名前知ってるアルか!?


3人ハモった。一方の私はぽかんとするしかない。


「流石神楽だな」


「何が流石ネ」


「報酬貰えるかもしれませんね!」


「おい聞いてんのか」


二人とも聞く気ナシ。
報酬報酬と踊っている。


「戻ったのか!?」


多串君も目を輝かせていた。


「いや、その子の名前だけは思い出したけど他は何も…」


私ってそんなに印象強いアルか…?


「なんか思い出した?」


一通り回り終えて自販機で買ったジュースを飲みつつ隣のサドに聞いてみる。


「うーん。懐かしいような感じもするけどこれといって特に何もないですねィ。」


「そうアルかー」


簡単にはいかないもんだ。


「なァ、チャイナ」


「何アル?」


「アンタすげェ可愛いよな」


「んぐっ!」


びっくりしすぎて慌てて飲み込んでしまったら気管に入った!!


「げほっけほっ!」


「あーあー大丈夫かィ?」


心配して背中をさすってくれてる。

やっぱりなんか別人っぽいなって 頭の隅で思った。サドなら笑ってさするなんかしないだろう…ていうか!!
「お前のせいだろうがぁ!!」


そもそも、私に可愛いなんて冗談も言うはずもないからむせることもないし!


「え。何が。あ、チャイナは可愛いなァってのか」


「二度も言うなぁ!」


「だって可愛いんだから仕方ないだろ」


「んななななっ…!」


いきなりのサドのありえない発言の連発に言葉も出ない


「真っ赤になってらァ。全く脈なしでもないんだねィ」


「ね、ねね熱でもあるのかヨ!」


「焦っちゃってー。可愛すぎ。」


「いぎゃあああ!」


サドの暴走が止まらない!もう耳を塞ぐしかない!


「チャイナ…いや、神楽」


「へぇ!?」


サドは耳を塞いでる私の手を引っ張って路地裏に二人で入る。状況についていけない!


「ホント可愛いなァ…」


「え?え?」


私を壁に追い詰め両手で塞いで逃がさないようにされた。

いつもなら殴るけど、サドは今日はいつもとは違うし、受身とかとれるか分かんないし…


そうこうしてるうちに前髪をかきわけられ、ちゅっと額に柔らかい感触がぁ!!


「っややや!何して‥!」


「キスでさァ。といっても額だから次はここにしようかねィ」


サドの人差し指が私の唇にそっと触れると、顎をくいっと上げられた


「さ、さど…?」


「好きでさァ、神楽。愛してる。もう離さねェから」


徐々にサドの顔が近づいてきた。本気だ!

なすすべなくぎゅっと強く目を瞑った。


そして唇にも柔らかい感触が押し付けられる


「んっ…」


た、助けてぇぇ!

そのうちサドは私の口を無理矢理開かせてきた…
まさかコレは……


予想が頭を過ぎったときに舌を口内に押し込まれた。


「ふぁっ!」


うやああ!なんかさっきから変な声出ちゃうアルううっ!
くちゅと唾液が混ざる音が聞こえた瞬間…



スパコーン!!


「お前は!嫁入り前の娘に何しとんじゃあああああ!!」


「総悟ぉぉぉ!お前どさくさに紛れになんてことしてやがる!」


二つの怒声が響き渡った。


「ぎ、銀ちゃん?に多串君!」


パッとサドが離れる。


「チッ…旦那がた空気読んでくだせェよ」


「そんな勝手な空気なんか読むかァァ!!」


「そうだ!お前もう記憶戻ってるだろ!」


え!?


「ばれたか」


「ななななっ…記憶戻ってるのかヨ!ていうか銀ちゃんらは私たちをつけてたアルか!?」


「うっ…いや、たまたま通りかかったんだよ。それよりも沖田君!お前神楽になんつーことを!!」


「ディープなキスでさァ」


「知ってるわそんなこと!とにかく俺は認めないからね!」


ずるずると状況を理解できないまま引きずられる。


「そうだな。お前も今から仕事だ。」


にやりとサドがこっちに笑いかけた気がした。


「明日から覚悟しろィ」


「ふぇ!?」


驚いて顔が真っ赤になったと思う
銀ちゃんは声にならない悲鳴をあげて怒鳴っている


わ、わけ分かんないネ!








(明日からどうすればいいアルかああああああああああ!!)





相互記念に"星架蒼彗"の屡音様から
頂戴して参りましたぁぁあああ!!
私のわかりにくいリクエストに
こんなに素晴らし過ぎる小説を…!!(T□T)
沖田さんの暴走に動機が止まりません。
相互に加えて素敵な小説を
誠に誠にありがとうございましたー!!!


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