俺が里を抜けて一体どれだけの月日が過ぎ去ったのだろうか。七月二十三日…、この日は俺が生まれた日。数年前まではアイツが祝ってくれていた日。周りにはいるはずの親や兄弟がいなくてもアイツがいたから幸せだった少し待ち遠しく思っていた日。全ての繋がりを断ち切って未練など無くなったはずなのにこの日だけは少しアイツが恋しくなる。一族も親も死んでいた俺に悲しみを感じさせないほどの笑顔や優しさを注いでくれたアイツ。未練たらしくアイツを思う度、胸が締め付けられるように苦しい。あんなに好いてくれていたアイツを放り出してきたのは自分なのに…自分勝手な話だ。それでも、この痛みが引く事は無い。どんなに自分勝手でもアイツを思う気持ちに変わりは無いからだ。どんな時だって、俺はアイツへの想いを変える事は無いから。



「(アイツ…俺の事覚えていてくれているのだろうか?)」















今日は馬鹿…サスケの誕生日。毎年毎年、誕生日なんて祝わなくていいと言いつつも陰では嬉しそうに頬を緩めていたサスケの生まれた日…。数年前から、アイツはこの生まれ育った里から消えた。抜け忍という、里に追われる者になってしまった。昔だったら今日はサスケの家に押しかけてサスケの為に甘さ控えめに作ったケーキに年齢分の蝋燭を立てて、誕生日によく歌われるお馴染みの歌を音痴と馬鹿にされながらも歌って、蝋燭の火を消して、ケーキを二人で食べて、毎年何をあげ様か悩みながらも買ったプレゼントを渡して、どうでもいい事を話して、サスケがいなくなる少し前からはキ…キスしたり、そんな……普通の恋人同士の様な誕生日。あんなに楽しかった七月二十三日という日。それなのに、今年は…いや、数年前からは一人ぼっち。昔、照れながらも渡してくれた合鍵を使ってもう微かにしかサスケの匂いが残っていない部屋で一日を過ごす。なんだか、ふらっと帰ってきて何してんだウスラトンカチって笑ってくれるんじゃないかって未だに思う。もう、今の彼は私の知っている"うちはサスケ"ではないのに。馬鹿だって…解ってる。解ってるけど、毎年私はこの部屋に来る。そして、サスケがいた頃の様にケーキを作って持ってきて…プレゼントを用意して、いないアイツに言ってやるんだ。












「誕生日、おめでとう…サスケ。」











今年も届かない言葉を紡ぐ。

(帰ってきなさいよ…馬鹿っ。)
((ごめんな、亜弥。))



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テーマ「人外ファンタジー」
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