息も絶え絶えだが、足を止めることは出来ない。閻魔の第一補佐官である彼と同じ鬼神である私でも彼は次元が違うのだ。鬼神の中でもズバ抜けていい意味でも嫌な意味でも変人じみている。だが、今は悪い意味での変人さを露わにしている。まさに鬼の顔を引っさげ私を捕まえようとあり得ない速度で走りながら追いかけてきているのだ。
何故そんな状況なのか?そんな事、私が聞きたい。朝一に目にした彼の放つ雰囲気に私は理由も分からず背を向け走り出した。身体が反射的に動き出してしまったので最初こそ何か恐い程度の認識で走り出したが今なら何故そんな上司相手にする反応で無い事をしでかしてしまったのか分かる。今も放たれる殺気にも等しい人を狩ってやるぞと言わんばかりの雰囲気だ。更にそこにあの鋭い眼光がプラスされる。目があった瞬間、捕捉すべき相手を見つけましたと言わんばかりの目でロックオンされてしまってはどんな生物でも反射的に逃げるだろう。命の危険を上司相手に感じるとは想いもよらなかった。



「いい加減止まりなさい!亜弥さん!」

「止まらせたいなら鬼灯様が止まって下さいよ!」

「そんな事したら貴方逃げるしょう!」

「んな恐ろしい顔した人に追いかけられてんですから止まるわけないでしょう!」

「取って食ったりしませんから止まりなさい!」

「その顔が説得力の欠片も無いんですよ!!」



仕事もせず走り回り続ける鬼神二人を止めることの出来る者は居らず朝から数時間に渡る鬼ごっこをし続けている。
鬼人であれど男女差はあるもので亜弥の体力の方が限界ラインを見せ始めた。たが、止まったら殺られる。そう思って手足がもげそうになっても動かし続ける。今の亜弥にそれ以外の選択肢などありはしない。
だが、そんな亜弥の努力も鬼灯の一手により意味のないものへとなった。



「良い加減に止まれと言ってるでしょうが!!」

「ちょ、良い加減にしてく……っ!?」



亜弥がチラリと振り向いた瞬間だった、黒い塊が目で負えない速度で顔すれすれを通過した。振り向かなければ、確実に当たっていた。あの壁に突き刺さっている金棒が。あまりの事に足が動かない、蛇に睨まれた蛙はこんな気分なのだろうか。足を動かしたいのに動かせない、違う、動かしてはいけないと本能が動かしたいという理性に待ったをかけている様だ。



「やっと止まってくれましたね、亜弥さん。」



喉が渇いて言葉すら紡ぐことを許してくれない、あぁ、駄目だ。もうお終いだ。亜弥は全てを諦めた。



「話があります、亜弥さん。まあ、これから話すことに拒否権などありません。貴女は頷いてくれるだけでいいですからね。」



++++++ーー… 。

ありきたりな話の書きたいとこだけ書きました。


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