風が当たるだけで痛いこの季節、海が見たいと言われ車を飛ばし約一時間半。海風が髪を抜けざらつくのが気になるが亜弥のはしゃぐ姿でそんな事はどうでもよくなった。誰もいない砂場に彼女の足跡が出来ていく。その横に自分の足を並べる、小さな足跡に口元が緩んだ。 風が強くなりぶるりと体を震わす。巻いてあったマフラーをきつめに巻き直し笑顔でこっちに手を振る彼女の足跡を辿る。ザクザクと砂で足を取られ歩きづらいのに彼女は平気な顔で海を見つめ歩き続ける。少し日が傾いた太陽が海に反射し茜色の光が彼女を照らしていた。綺麗な色に染まる彼女。そんな彼女の瞳にも光が反射し美しい。 「サスケ!!ほら早く!!来て正解だったよ〜すごい綺麗な景色!!」 「そうだな、いきなり車に押し込まれて海まで運転しろと言われて来た甲斐があったな。」 「だ、だって思いついちゃったんだから仕方ないじゃない!!」 少ししゅんとした彼女が面白くて冷え切った頬に指を這わす。擽ったそうな顔で照れる姿がとても愛らしいと思った。 「あぁ、そうだな。お前はいつも思いつきで動く。迷惑な奴だ。」 「うぅ…、ごめん…。」 「まあ、それでもお前ならいんじゃないか。迷惑な奴を承知でお前といるんだ。」 落ちていた気持ちが浮上するのが目に見えて分る彼女に思わず吹き出す。本当に、可愛い奴だと思う。言ってやるのは癪だから言わないがな。 吹き出したことが不思議なのか首を傾げているのが更に笑いを誘う。俺は普段そんなに笑う奴じゃないというのに彼女の前では表情筋が妙に緩いらしい。…因みにこれはサクラにも指摘された。 「何きょとんとしてんだ、行くぞ。そろそろ日も沈んできたし帰って飯でも作れ。」 「え?う、うん。」 冷えていた頬が何故だか暖かくなった彼女の手を引いて停めていた車に戻る。横で笑顔を見せる彼女の手料理が早く食べたいとアクセルを踏んだ。 |