満月が照らす夜道をふわふわした気分で鼻歌交じりに歩く。自然と足取りも軽くスキップでもしたくなってくる。だが、流石に私はもういい大人なので弾む足をおさえヒールをコツコツといわせながら歩いていた。鼻歌の時点で恥ずかしい奴なのは気にしてはいけない。
因みに今日は、私の大好きなあれが届く日なのだ!そう、あれだ!ん?あれとは何だだって?それはね、毎月毎月給料日にしか食べることの許されない(お財布的な意味で)お取り寄せのプリンなのだ!!え?たかがプリン?なにがそんなに嬉しいのか?それはね、あのプリンを食べたことのない奴の意見だね。あれはね、卵や牛乳その他調理器具にまで拘りをもち、日に多くても五十個程しか作られていない幻のプリン!あのプリンは本当に美味しい。口に入れた瞬間、とろぉ〜っと口に溶け広がる。だが、口には濃厚なプリンの味が残りこのままでいれたらどれほど嬉しいかと思わされる。一口一口を愛おしむように食べる……あの時以上の幸せな時間を私はまだ味わったことがない。
そう、それほどの物が届くのですよ!配達指定時間は八時から九時。現在時刻は七時五十分。家までが歩いて十分ほど、これなら余裕で受け取れる!この日の為に私は一週間前から必死に仕事をし続けた。取引先に指定された納期が近く、チーム全員でパソコンの前に縫いつけられた様に仕事した。来る日も来る日も残業、残業…人一倍残業した。それもこの日の為。
家に続く階段をやや早足で上る。家は三階なのでやや息切れしながらも到着。上がったところで家の前に人がいた。しかも手元には待ちに待った箱を持って。




「うちはさん!!もう来てたんですね!早いじゃないですか〜!今丁度八時ですよー?」

「他の配達が早く終わってな。まあ、アンタも早い方が嬉しいんだろ?」

「そら勿論!そのために早く上がってきてるんですから!」

「そうか。ほら、ここサイン。」

「はーい!喜んで!」



この人はうちはサスケさん。この辺りの地域を担当してる運送会社の人だ。毎月毎月頼んでいるせいか名前を覚えられ今ではちょっとした立ち話も出来る仲。至宝のプリン様を丁寧に運んでくれる愛しの人だ(深い意味はない)。最初こそニコリともしない愛想の悪い人というイメージだったが、話せしてみると意外と笑う人だとわかった。因みに、このお話が地味に楽しみだったりする。





「アンタ、本当にこれ好きだな。これ以外をここに運んだ覚えがない。」

「うちはさんも食べてみればいいんですよ!ここのプリン、絶品ですから!とろぉ〜と溶けた瞬間の幸せっ!この時のために仕事してたんだなーって思うんですから!!」

「プリンの為に仕事してんのかアンタ。」

「だってこれ本当に美味しくて……あ!そうだ!今日は奮発して2つ頼んだんです!良かったらこれ食べてみて下さいよ!」



いつもいつもプリンの為にと言われ続けているので、ここらでうちはさんにもこのプリンの虜になってもらおうと箱をその場で開ける。丁寧に梱包されているので開ける行程からすでにわくわくしてしまう。木箱に入っていて高級感溢れる姿にうちはさんの前であるにも関わらずうっとりしてしまう。





「おい、お楽しみのところ悪いが…俺は甘いものが苦手なんだ。遠慮しておく。」

「え!!?甘い物ダメだなんて人生損してますよ!?」



まわりに甘いが駄目なんて人は滅多にいないのでつい声を大きくして言ってしまった。時間帯的にもう騒いで良い時間じゃないのではっとなって口に手を当て反射のように周りを確認。特に人が出てくる様子もないので安心して小声でもう一度同じ事を言う。



「甘い物だめなんて損してますよ!」

「……甘い物が苦手だっていうと口を揃えたかの様にそう言うな。別に損をしているつもりはないがな。」

「だってこんなに美味しいのに……ひ、一口でも食べてみませんか?」

「アンタそんなにそれを俺に食わせたいのか。」

「だって絶対これはうちはさんをも虜に出来ますって!」

「そうは言ってもな…ここで食うのか?」

「あ!そうですよね!………家、上がります?」

「………今は勤務中だからな。」

「ですよね………。」

「………………アンタ、明日って暇か?」

「え?…まあ、休みなので家にいるとは思いますけど……。」

「なら、明日来てもいいか?俺も休みなんだ明日。」

「…………は、はい。どどど、どうぞ?」

「どもりすぎだろ。」



突然の約束


赤面する彼女をみて微笑む彼の真意とは?





++++++++++++++++ーー… 。

続きをかけたらいいな。


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