嵐の様に吹き荒れる風。そして叩きつける様な雨。人はこんな天気の時に外に出ようとは思わない。思えない。何故なら殆どの人間は雨に濡れるのを嫌う。なんだか濡れたくない、乾かすのが面倒だ、様々な理由があるだろうがまあ雨の日が嫌いまたは苦手という人が多くいるのは確実だ。
そんな雨の日、私と私の膝に頭を乗せ読書をしているコイツも外に出る気など一ミリも持ち合わせていないので室内でのんびりとしている。まあ、のんびりといっても寛いでいるのはコイツだけ。人の足を拘束しているというのに自分はまったり横になりながら読書だ。良い御身分だよ、本当に。私は特に何をする訳んでもなく雨が強く打ちつけているせいで外の景色がぼやっとしか見えない窓を眺めたり、コイツの髪を触るくらい。くらいと言ったがコイツの周りにはとんでもない人数の取り巻きがいるのでその取り巻き共からしたら羨ましくて仕方が無い事なのだろう。よく何でアンタなんかがいいのよとかサスケ君はブスが好きだったのねとか言われるが…、仕方ないじゃないか。コイツが選んだのだから。お前らが大好きなサスケ君はこんなのが好きなのだから。自分でも不思議なんだっての。私の何がよくて私を選んだのか。顔は良い、成績もいい、実技試験の成績も申し分ない。性格は少し難ありだが…、まあ良物件だな。凄い上からの物言いだが…、まあ許してほしい。私の性格だ。なんにせよ、私にはコイツが今何故ここにいるのか解らない。もっと美人のところに行けばいいのに。








「ねぇ、サスケ。」

「………………あ?」



本を読んでいるせいか反応が遅い。しかもこれはこっちの話しを聞いていない。そんなに面白い本なのだろうか。今度借りてみよう。







「サスケは私の何が良いの?」

「…………これ。」

「うわっ!?」



人が結構真面目に質問したというのにコイツ…。これといって私の太股を摘みやがった。しかも触り心地が良かったのか何故かふにふにと摘むのをやめない(肉付きが無駄に良くて悪かったなこの野郎)。
ふに、ふに、ふにふに、ふに、なんだコレ。本を読んでいた筈のコイツだが本にしおりを挟み、私の腹の方に顔を向けたと思ったら体制を整えてふにふにと摘む事を再開した。コイツ…、何がしたいんだ?無表情で摘む、摘む。え?こんな奴だったっけ?あれ?







「ねぇ、サスケ君。何してんの?つか、何したいの?そんなに私の太股好きですか?」

「ああ、好きだな。」

「…おぉ、サスケがさらっと好きとか言いよったで。これ雨の次は槍でも降るんじゃない?やめてよ。家壊れる。」

「お前は俺を何だと思ってる。」

「無敵の完璧超人、SASU-KE?」

「誰だそれ。」

「うちはサスケでしょ。」

「答えになってねー。」




そんな会話をしながらもコイツは人の太股を摘むのをやめない。そんなに触り心地が良いのだろうか?触るのを何を言っても止めないってそんなに好きなのか?私の太股。
随分と長い事ふにふにし続けた頃、やっと手を止めた。ああ、やっと動けると思った途端にガバッと勢いよく起き上ったサスケに驚いて身を後ろに引いたら起き上ったサスケにそのまま床に縫いつけられた。一体何事だ。







「ちょっと…、痛いんだけど。背中も頭も。」

「良い眺めだな。」

「黙れよ変態。」

「口の悪い女だな。塞ぐぞその口。」

「変態に塞がれるくらいなら自ら木の棒でも咥えるね。」

「…それはそれでエロいな。」

「真面目に気持ち悪いから変態。」






何故か押し倒されたまま変な会話を続ける二人。はたからしたら本当に変な光景だ。普通なら甘い会話でもしていそうなのだが罵る言葉を言い続ける女のせいで雰囲気ぶち壊し。だがその罵る言葉の元がすっと閉じた。真剣な表情になり上に乗ったまま動かない男を睨みつける。









「……なんなの?」

「お前、さっき変な事言ってたろ。」

「は?」

「お前の何処が好きなんだって言ってたろ。」

「……太股なんでしょ?」

「馬鹿かお前。」

「馬鹿ですが?」

「そうだろうな。馬鹿じゃなきゃそんな質問してこないな。」

「………なにが言いたいのよ。それよか早く退け。」

「お前が好きなんだよ。」

「…だから、何処が好きなのよ。私の。」





漠然とお前が好きだなんて言われても私はこんなんでも女だ。何処が好きなんだろうって思うのが自然じゃないか。私が聞きたいのはこんな取り柄の無い口の悪い私の何処が好きで一緒にいてくれるのか、そこなんだ。だって知りたいじゃないか。周りにはお前なんかじゃサスケ君には釣り合わないだなんだと言われ続けてるんだ。本人から、何処が好きなんだって言ってほしい。








「お前には耳が無いのか?」

「サスケこそ、私の質問聞いてる?」

「だから、お前が好きなんだって言ってんだろ。」

「だから、何処が好きなんだって聞いてるのよ。」

「何処とかそんなのは無い。お前が好きだ。」

「………はぁ?」




訳の解らない事を言いだすサスケ。しかもお前の方こそ何を言ってるんだとでも言いたげな顔をしている。いや、何処とかないって…え?それじゃあ何で一緒にいてくれるの?私が好きって…いやだから何処だかが好きだから一緒にいるんじゃないの?違うの?訳が解らない。本当に何を言いたいんだ。この男。







「お前なら良いんだよ。俺は。」

「馬鹿にも理解できる様な日本語使ってくれる?」

「…何処の誰に何を言われたのかは知らないが、他の女なんかじゃつまんねーんだよ。」

「…ん?え?なに?…はい?」

「お前といると笑える。それだけ。」

「………………ハァ!!?」




笑えるって何だこの野郎


(ごちゃごちゃ考えんなよ)
(考えて何が悪いんだ!!)
(お前らしくねーぞ。)
(うるさい!!質問の答えになって無いんだよ!!)
 

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