身体が熱い、喉が渇く、頭が朦朧とする。

以上、私の現在の身体状態。…うん、風邪引いてますね。もうどう考えても風邪ですね。これを風邪と呼ばずして何て呼ぶんですかね?ですが私、社会人なんです。しかも、絶賛修羅場中です。お仕事に終わりが見えません。おかしいな〜?私昨日も徹夜して頑張ってきたのに今日も徹夜な予感しかしないぞぁ〜?…助けて下さい。やばい、ヤバいよ。身体中が痛いのに!
そんな事を思っていても仕事は溜まるばかり。いくら手を動かそうと隣には書類の山、山、山…。あまりに書類を見過ぎて目がチカチカしてきた。…いや、多分この体調不良のせいが大きいだろう。関節が痛い上に手に力が入らなくなってきているのも仕事が終わらない原因の一つだろう。
何にしても、頑張って仕事を終わらせて早く帰れるようにするしかない。痛い身体を無理やり動かし、必死に書類に目を通す。ああ、ヤバいぞ。頭がぐわんぐわんしてきた。










「おい、黒野。お前もう上がれ。」




不意に聞こえてきた、この場で聞こえて来る事なんて想像できない言葉。その言葉の主がいる席に目を向ける。
驚いた事に言葉の発信源は、うちはサスケ部長。入社して数年で部長にまで上り詰めたとんでもない人だ。仕事は早く、正確。部下への指示も解りやすい。上司からの信用も厚い。そして何よりも目を引くのは容姿の美しさである。美しいなんて男性に使う言葉ではないが、私はその言葉こそ部長に相応しいと思う。
だが、鬼部長である。え?どこが?いやね、この人…短気なんですもの!!しかも、すっごい口悪いんですよ!!ちょともたついただけであの整った顔で睨んでくるんですよ!!あんな整った顔で睨まれたらどんなに恐いと思いますか?そらもう声も出なくなるくらい恐いですよ。思わず唾のみ込みますよ、眼なんか見れないですもの。
そんな部長からこの修羅場に、あがっていい?ははは、ウソでしょ?だって部長だよ?あのうちは部長だよ?こんな時こそ何してんだドべ早く仕事進めろって言う筈さ。…え?











「じゅみ…、すみません部長。私とうとう幻聴まで聞こえるようになってしまったようです。」

「…はぁ?」

「うちは部長に限ってそんな事言う筈ないですもの。だって、うちは部長ですよ?あの後輩の話を聴く時の第一声は『あ?』な、うちは部長ですよ?基本眼だけで相手を黙らせる事の出来るうちは部長ですよ?」

「お前、俺の事なんだと思ってんだ。鬼かなんかか。」

「ええ、鬼かなんかだと。」

「お前、そんなに素直な奴だったか?」



なんだかとっても失礼なことを言ってしまった気がするが、仕方ないじゃないか。だって、頭ぐわんぐわんいってるんですもの。幻聴だって聞いちゃうし、部長に生意気な口だって聞いちゃいますよ。










「黒野。」

「はい、何でしょうか?」

「俺は、お前に上がれと言ったんだ。」

「…部長。私、また幻聴が…「だから、お前いい加減にしろよ。」




部下に無理させらんねーだろうが


(不器用な部長の、優しい言葉。)

 



++++++++++++++++――… 。


あれだよね。こんな上司くださ(黙れ)


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