あの日からも忙しい日が続いていたがやっと落ち着いてきた。仕事も談笑を交えながらで気持ち的にも落ち着きが出始めこっちの友達も出来た。



「雪子さーん!この仕事終わったよ〜!」

「こら、茄子!お前はいつもいつも馴れ馴れしい!」

「わわ!唐瓜くん!大丈夫だから殴らないの!」



新人獄卒だという小鬼の茄子と唐瓜と仲良くなったのだ、小さな彼らはなんだか可愛くてついつい弟のように接してしまう。兄弟がいなかったので彼等とのお話はとても癒しになる。



「二人とも御苦労様〜、もうお昼だし一緒に食堂に行かない?」

「やったぁー!行こう行こう雪子さん!」

「あーもう、お前は!…いいんですか?雪子さん!」

「うん、弟みたいで可愛いなー!」



二人で話をしながら食堂に着くと雪子は海老フライ定食を頼んだ。ここはメニュー豊富でいつもいつも選ぶのが楽しい。
先に行った茄子を探すとテレビの前を陣取る鬼灯の隣に座っていた。その鬼灯の正面ではシーラカンス丼を食べる閻魔も座っていた。え、シーラカンス丼ってあんな感じなんだ。今度食べてみよう。



「雪子さーん!唐瓜ー!こっちこっち!」

「閻魔様、お隣宜しいですか?」

「あ、雪子ちゃんもお昼?いいよー、座って座って!」



閻魔の隣に雪子が腰を下ろすと唐瓜は茄子の隣に座った。なんのテレビを見ているのかと聞くとあれあれと指差された画面にはエアーズロックが映っていた。現世のテレビなんか見れるのかと思いながらまだ熱々の海老フライを口に含む。サクサクしていて美味しいなここの海老フライとにこにこしてしまう。レモンをかけるのも良いがやっぱりタルタルソースが一番だと思う。



「あー、オーストラリアかー!ワシもたまには旅行に行きたいな〜!」

「そうですね、私も魔女の谷とか観光したいです。」

「現世ですか、私一度も降りたこと無いです。」

「俺達も降りたこと無いです、な?茄子。」

「いいなぁ〜、俺も現世行きたいな〜!」



わいわいと現世の話に花が咲く、やれコアラが可愛いだワラビーが可愛いだと何故かオセアニアの動物トークが盛り上がる。意外なことにも鬼灯は動物が好きなようでコアラを抱っこしたいとぐっと握り拳を出して言っていた。可愛い趣味があるんだなあと驚いた。画面の向こうではコアラもユーカリの葉を食べているところだった。



「それにしても君の好みとかって分かんないよね〜、どんな子が好きなの?」

「この子は割と可愛いと思いますよ。早めにこっちにきてほしいくらいです。」

「鬼灯様こーゆう子が好みなんですか〜?」



動物の好みから、女性の好みの話に移る。雪子は自身には関係ない話だなと付け合わせのキャベツをモシャモシャ食べる。あ、このドレッシング美味しい。後で何処のメーカーの物か聞いておこう。



「雪子ちゃんはどんな人がタイプ?」

「え?私ですか?ん〜……真面目な方ですかね。これといって無いんですけども。」

「えー!雪子さん!それじゃあ唐瓜なんかどーですか?コイツ真面目が取り柄…いて!」

「お前は何を言ってるんだ!何を!!」

「あはは、唐瓜くんも可愛くて好きだよ〜!」

「でも真面目だったら鬼灯君は?この子なんかも真面目だよ?」

「そんなそんな、私なんかじゃお相手になりませんよ。」



何だか気が付くと雪子の好みのタイプについて話が進みだした、すぞっと味噌汁を啜る話題に上がった鬼灯は特に意見する気がないのか目線はテレビに向いている。因みに今は先程話にも上がったワラビーがお昼寝をしている。反応なくてつまらないな君はと閻魔が溜め息をつくも煩いですよとお馴染みの金棒が閻魔の頬を直撃していた、まあ反応に困る内容だなと雪子もまた味噌汁を啜る。今日の具は豆腐と葱のようだ。



「ほら、もう食べ終わったなら仕事に戻りますよ。まだまだ仕事は山積みなんですから。」

「えー、もう少し話しても……ごめんごめん!お願いだから金棒を降ろして!」



付け合わせのお新香も美味しかったなと綺麗になった食器の入ったトレーを手に取り返却口に返す、おばちゃんに美味しかったですと声をかけるのも忘れない。
午前の仕事は片付けたので、この後の仕事は何をしたらいいかと鬼灯に聞こうと振り替えると直ぐそこに鬼灯が立っていたため反応しきれず軽くだがぶつかってしまった。



「すみません、鬼灯様。」

「雪子さん、私は貴女のような方もタイプですよ。」

「……………え?それどうゆう…鬼灯様!?」



言いたいことを言ってそのまますたすたと食堂を出ていってしまった鬼灯に待ってをかけるも振り向くこともなく、またしても呆然と立ち尽くすことになった。あの人はなんてマイペースなんだろうかと今度は赤くなっているであろう頬を押さえる。他に誰も聞こえていない事にほっとしつつもからかわれているのかと深いため息が漏れる。案外茶目っ気のある方なんだなと当初とは随分とイメージが変わった。それでもやはり思考が読めない事は変わらない。いつだって冷静沈着で顔からは何を考えているか分からない。
こんなところであーだこうだと今の発言の意味を考えても答えなど分かる筈もないと落ちた頭を上げ、去っていった鬼灯を追う。今は何より仕事だと、最近の自信への呪(まじな)いを心の内で唱えながら。



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