お汁粉をずずずとすすって息を吐く。目の前にいたサスケが露骨に嫌な顔をした。甘いものが苦手なサスケからしたらこの匂いだって嫌なのだろう。こんなに美味しいのに苦手だなんて残念だ、本当に残念だ。



「そんなに嫌な顔しなくてもいいじゃない。そんなに嫌ですかね。」

「匂いからして甘ったるいんだよ。」

「そんなに〜?これ結構甘さ控えめに作ってくれてるほうよ?母さん作だし。兄さんなんか何も言わずに他の鍋に小分けにして砂糖足してたわ。」



容易に想像できる兄の姿にぞっとしたような嫌悪感を露にした顔のサスケ。いやね、まああんなに砂糖をだばだば入れてる姿は流石に私も気持ち悪かったわ。あんなの砂糖よ、小豆風味の砂糖だもの。思わず部屋に逃げたもの。



「追加でお餅焼くけどサスケも食べる?」

「ん〜…食う。」

「お汁粉?」

「海苔と醤油」

「はいはい〜!」



お餅とお汁粉の配分を間違えたので追加で餅を焼く。トースターに入れタイマーを回す、焦げるのが嫌なので焼けるまで前で待機。表面が焼けてぷくっと膨らんできたらタイマーを切る。うむ、いい出来だ。私のお汁粉に一個、サスケ用にお皿に餅を二個置き醤油と海苔を手に炬燵に戻る。やっぱり台所は寒いね。



「ほいサスケ、姉様が焼いてやった餅だ。有難くお食べ。」

「いいから早く寄越せよ。冷める。」

「本当にどうしてこうも可愛げがないのかしら…、誰似よ。」



可愛げない弟に餅一式を渡して冷えた手を炬燵で温める。まったく、本当に誰に似たんだか。
熱々の餅に醤油をかけ箸で転がし海苔を巻く。磯辺揚げの完成。美味しそうだな…いいな。甘いものを食べていたのでなんだかしょっぱい物も食べたくなってきた。



「サスケ君、サスケ君、一口ちょうだいよ。いいわね、凄いいい匂いなんだけど。」

「もう一個焼いて来いよ。」

「そうだな、ついでに俺の分を二個ほど焼いてきてくれ。」

「…兄さん何処にいたの?」

「炬燵の中。」

「猫か!!!!」



ぬっと出てきた兄の顔には畳の跡がくっきりついていたので中で寝ていたようだ。よくこんな中で寝ていられるな…。
すっかり目が覚めた兄さんに早く行けと言わんばかりに目配せされるがいやいや、私さっき焼いてきたんだけど。



「私さっき焼いてきたから兄さん焼いてきてよ!私寒いの嫌!」

「兄さんの家はここなんだ…家から出れない呪いがかかってるんだ…。」

「どっちでもいいから早く焼いて来いよ。あ、俺ももう一個。」



三人で見合う。仕方がない、ここは正々堂々勝負だ。三人で拳を握り振りかざす。



「「「じゃんけんぽん!」」」



パー二人、グー一人。負けた私は餅を焼きに炬燵から抜け出した。悔しいので二人の分は少し焦がしてやる。
 


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