一週間、ちょっとややこしい任務で外に出ていた期間だ。そして、その任務が昨日ようやっと終わった。食事も兵糧丸やインスタントに現地で調達した物…寝床もほぼ野宿という過酷なものだった。久しぶりの布団に入ったときなんかもう一生出たくないとさえ思ってしまうほど感動した。…いやまあ、兄さんや父さんに言ったら一週間なんて可愛いものだと鼻で笑われてしまいそうだがそれでもやはり一週間なんて億劫になるものだ。
そんな任務明けの今日、久しぶりの非番だ。寝ないでどうすると意気込んで寝れるだけ寝た。起きた時間は13時、半日以上は寝ていたなぁ〜と意気込んで寝た筈なのに半日無駄に過ごしたという気持ちも大きい。あれだ、あれだけ詰めたスケジュールを過ごしていたせいか何もしないとそれはそれで何とも言いがたい気持ちが沸いてくるらしい。寝すぎて少し痛い頭を押さえながら居間に降りる、サスケが何やら書類を書いていた。



「ん?サスケ何書いてんの〜?」

「は?…あぁ、姉さんか。…今起きたのかよ、寝過ぎだろ。もう昼も過ぎてるじゃねーか。」

「お黙り。姉様はねー、一週間の里外任務が終わったばかりなの!非番なんだからいつまで寝ててもいいでしょ!」

「………ぐーたら上忍。」

「姉さんを気遣う言葉もかけられないのかしら?こんの新下忍風情がっ!!」

「は、離せこのアホ姉!!」

「アカネ!サスケの邪魔しないの!今報告書書いてるとこなんだから!」



母さんに怒鳴られてはやめるしかない、大人しく締め上げていた腕を首から離す。まったく、可愛くない弟だ。誰に似たんだ?……私か。これといってやることがないのでとりあえず、サスケの横に並んで炬燵に入る。大変だ、ここ極楽だよ。こんな近場に極楽があったよ。炬燵の上に乗っている蜜柑を手に取り剥く。柑橘系は匂いからして美味しそうだ。



「何で横なんだよ、向かいに座ればいいだろ。」

「ん、いいじゃない。ほれ、蜜柑食べる?」

「…………一つ。」



炬燵に蜜柑の王道コンビに文句を言っていたサスケの口が静かになる。やっぱり無敵だよね、これは。お、しかも酸味が強いタイプの蜜柑だ。これはサスケ好みだね。私も蜜柑は甘味より酸味が強い方が好きだ。兄さんは言わずとも分かるだろうが甘味が強い物が好きで、よく酸味が強いと押し付けられた。



「姉さん、もう一つ。」

「………もう一つ、が何?」

「……………ください。」

「宜しい、ほれ。」

「ん、サンキュー。」

「アカネ、俺にも一つくれ。」

「……うん、お帰り兄さん。でもこれ甘くないよ?」

「お帰り、兄さん。」



いつの間にか帰ってきた兄の手が横からぬっと表れ少し驚いた、不覚にも全く気付かなかった。家の中でまで気配消すなよ兄さん。そんな兄の手にとりあえず蜜柑を一つ落とす、今日は酸味が強くてもいいようでひょいと口にほおって手を洗うために洗面所に向かった。…いや、兄さん。食べる前に洗わなきゃ意味無いよ。



「兄さん、これはどう書いたらいい?」

「ん?あぁ、これか。」

「ちょ、兄さん積めないでよ!わざわざこの面だけに三人座ることないでしょ!」



サスケの横に座るつもりなのか、積めろ積めろと押してくる兄と弟に反発するように押し返す。いやいや、だって本当にこの面に三人座るなんて狭すぎる。
やめろ、やめろとなんだか押しくらまんじゅうをしているような光景に、鼻唄混じりに母が笑った。




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