「抹本くんはすごいなぁ」

 頬杖をついてそう言った彼女の微笑みはとてつもなく眩しい。 もちろん比喩だけど、でも、俺にとって彼女の笑みというのはそのくらい直視し続けることができないものだった。

「えと、ど……どうして?」
「だって薬の調合がすごく上手じゃない。 それって、他の獄卒にはできないことだし」
「お、俺には、これくらいしか取り柄がないから……」

 彼女がじっと俺の手元を見ているのがなんだか急にはずかしくなって、意味もなくビーカーのなかの液体をマドラーでかき混ぜて気を紛らわせる。 きっとこの行為にも意味があるのだと思っているのだろうな、なまえは。 彼女は俺のことを信頼しすぎだ。
 本当は、女の子なのに毎日谷裂に稽古をつけてもらったり、すこしでも知識をつけようと医学の勉強をしているなまえのほうが俺なんかよりよっぽど賞賛されるべき存在なのに。

「私には取り柄と呼べる取り柄もないけどね」
「そ、そんなことない! なまえは、負傷者の処置が完璧だって先生、いつも褒めてるし……! だ、だから、いつも、スムーズに手術に入ることができるんだって、言ってた……!そ、それってすごいことだと思う!他の皆なら、そうはいかないよ!」
「そ、そうかな……えへへ」
「うん、うん!そうだよ……! このあいだの任務で、皆が怪我してたときも、なまえって便利だから、みんなにマワされてたし……!自信持って!」
「その表現は誤解を呼ぶからやめて!?」


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