今日はとっても天気がいい、太陽もピッカピカ、雲一つない青空。だが春の気分は外の天気と正反対に、どしゃ降りの雨だった。
 桐間が電話をしても出てくれない、メールしてもうん、ああ、だけ、家には遊びに行かせてくれない。春は携帯を持ちながら肩を落とした。桐間が怒っていることがいやでも分かる春は、なんで怒っているのかも分かっている。2日前にあった一組との合同体育、桐間との約束を守れず夏の一メートル以内に入ったと共に、足にしがみついて褒めちぎってしまった。仕方の無いことと思うが、桐間はどうやら怒ってしまったようでこの通りである。春は何度目か分からないため息をついた。

「なんだよ。今日しゅんってばずっと携帯ばっか見て、恋煩いか?」
「そんな可愛いもんじゃねーよ」
「まさか人妻に手を出したとか!? お前ってば、実はかなりのやり手なのか!」
「違うって、ちょっとお前黙れ!」

 一人で妄想を膨らませては、隣でバタバタ暴れている斉藤にキレながらももう一度携帯を見るが、やはりメールや電話は来ない。春は仕方なく思い、携帯をポケットにしまった。

「てかさ、聞いたことないんだけど、しゅんって女の子とか興味ないの? お前って別に悪い物件じゃねーじゃんまあ良くもないけどな」
「なんだよ、そこは褒めろボケ。まあ興味ない訳じゃないけど。」

 今は理依哉にお熱なんだ、なんて言えるはずもなく春は言葉を濁す。あっそ、と適当に答えられて聞いてきたのはお前だろと噛みつきたくなるのは我慢した。だらだら二人で話していると朝のHRが始まる。こうやって今日も終わって行くのか、と思っていながら担任の話を聞いていると後ろを向いている夏と目が合った。ここで無視するのも失礼かと、春は口パクでおはようと呟くと夏は少し固まる。返事を待ってみるが、彼からの返事は結局見れず顔を逸らされてしまった。
 機嫌でも悪いのかな。
 春は近付かれない方が良いので、さほど気にせずに担任の話を聞き流す。

「そうだ、しゅん」
「んー?」
「お前今日空いてる?」
「まー」
「じゃあ来るよな!」
「えーどこに」
「ん、合コン!」

 おおーと言おうとして、自我を取り戻す。合コン? 何故いきなり合コンなんだ。春が斉藤を見ると、斉藤はあれ、と首を傾げる。

「言わなかったっけか。今日俺合コンなんだよ、で女の子に男の人数合わせ頼まれてさ。だから春も来いよ」
「言われてないし、行かないし。お前どんだけマイペースなんだよ」
「なんか頭ん中だけで会話してる時ってない? 言ったもんだと思ってたーっつうのはどうでもよくて、行かないってなんだよ、ノリ悪ぃー」

 隣の席でクレームをつけて来る斉藤を見ないようにしながら、春は前から回って来たプリントを眺めた。
 斉藤って前から思ってたけど、どっか抜けてる、つーか頭がない。なにあるあるっぽく言ってんだよ、そんなんねーよ。バカなんだな、正真正銘のバカだ。
 斉藤の事をそんな風に頭の中でけなしながら春は聞き流していたが、話を聞かれない事に腹を立てたのか、斉藤が机を蹴って来る。やりやがったな、と春が斉藤の方を見ると斉藤は頬袋にどんぐりを詰めたリスの様に頬を膨らませていた。笑ってしまいそうになるが威厳がなくなるので、真顔で舌打する。

「なんだよ、うるさいな」
「なあ、行こうぜー。そんな怖い顔しないでさ、一生のお願いだから! これで人数集まんなかったら合コン出来なくなっちまう」
「いいじゃね、それで」
「しゅーんー!!」

 この間まで牧田がどうの言ってたやつが何を、と思いながら春は心を鬼にした。一人と別れてすぐ付き合うからすぐに別れてしまうのだ、友人としてお灸を添えなければと斉藤の言葉を全て聞き流す。
 だが、斉藤はそんな甘い事で諦める人間ではなかった。彼を英語で表すのならば、ゴーイングマイウェイ。

「え、じゃあいいや、夏に言ってしゅん連れて来て貰うから」
「は?」
「夏が言ってたぜ、春ちゃんは俺のいう事なら何でも聞くんだーってな! だからしゅんが大人しく来てくんないなら夏に頼むまでだ!」

 あっかんべー、と舌を出す斉藤に、舌出しても可愛くない、そこまでして合コンに行きたいのか、と言うか夏はそんな事言ってたのか、など突っ込みたい事はいっぱいあったがこれ以上夏とは極力関わりたくない春は頭を抱えた。春がどれだけ抵抗しても夏ならば嫌がる春見たさに斉藤の味方をして、またあのネタをだしにし春は脅され、合コンに行く事になるだろう。それだったら、黙って行った方が良かった。

「分かった、行けばいいんだろ、行けば、このやろー!」
「おう、しゅんはそうこなくっちゃなあ!」

 春がヤケクソになって言えば楽しげに斉藤は笑う。こういうところは可愛いと思えるのだが、自分中心の考え良く言えばマイペース悪く言えば自己中をどうにかして欲しかった。早く今日一日終われば良いと頭の中で何度も願う。

 そうして、悪夢が始まった。


「おい、田中、なんで夏くんがいるんだよ!」
「田中じゃねーよ、斉藤! 仕方ねーだろ、人数足りねーし夏が行きたいって言ってくれたんだ。でも正直俺もやだったんだ、今日の女の子、全部夏に持って行かれるんだろうな。俺は黙っておこぼれを待つよ…」

 春の隣の隣、涼しい顔で座っている夏を見ないようにしながら春は斉藤を突ついて斉藤に耳打ちすると斉藤も半泣きになりながら肩を落とす。
 お前はおこぼれを待ってまで彼女が欲しかったのか。
 斉藤の可哀想な心情を聞いて涙を流しそうになりながらも、春は目の前に座った女の子三人を見た。皆可愛らしくて、この子達が彼氏いないなんて信じられない。最後まで抵抗していた春だが、ここまで来たら楽しむしかないと春は大きく笑った。

「うわー、皆可愛いね! 皆が揃ったし早速、自己紹介しますか! あ、俺春っていいます」
「可愛いなんて、春くんちょー上手」
「あ、しゅんでいいよ。みんな呼んでるし。」
「そなの? じゃあしゅんくん、よろしく。あたし綺羅!」

 そんなこんなで始まった合コンだが春も口が上手いのでなかなか上手く言っている。
 なんか久しぶりの女の子、癒されるなあ。
 春は鼻の下を伸ばしながら皆を見ていると、可愛く微笑み返す女神たち。自己紹介はどんどんと盛り上がりを見せ、最後の夏の所まで行った。女の子達は夏にばかり注目していて、斉藤はその現実に目を逸らしている。やはりモテるな、と思いながら夏を見ると夏は満面の笑みを浮かべた。

「俺、桐間夏。こういうのすんごい緊張しちゃうな、えと、よろしくな」

 その控えめな感じに女達の心目掛けて矢が放たれるのが分かる。隣で斉藤が机の下で自分の太ももを叩きながら悔しがっているのが見えて、思わず斉藤の背中をさすりそうになった。
 あんな笑顔は見た事が無いが、女の子と話す夏を見て夏がモテる意味が分かった気がする。一人一人に丁寧だし話を振るのも上手だ。夏の落とし技にはスタンディングオベーションをしてしまいそうになるほど感動する。男というのはこうで有るべきなのだ。斉藤も見習えと肘で突くが、もう諦めてるのか凭れた首が無残にもブラブラと揺れている。どうか斉藤のおこぼれを、と願っていると一人の女の子が手を打った。

「なんか夏と春って、季節で合ってるね! 可愛い〜」

 春はビクリ、と肩を震わせる。過去の思い出されるアレコレ。それを今から言い出すんじゃないかと春は冷や汗をかく。別にこの子達に好かれたいわけでは無い、人前であの話はされたく無いのだ。
 夏が口を開く前に何か言おうとすると、やはり春より前に夏がああ、と口を開く。もう終わったと自分も斉藤のように首を凭れようとすると夏はまた貼り付けたような笑顔で笑った。

「だろ? 俺と春ちゃんは幼馴染で、ずっと一緒にいるんだ。すっげー気合うし、お互いがお互いを大好き。お似合いだよ、な、春ちゃん?」

 そんな仲の良い記憶は脳の中をどれだけ掘り返しても出てこないが、ここで否定すれば過去が公になってしまうので夏に合わせて返して置く。すると、女の子達は仲が良いんだね、と猫なで声を出しながら夏に笑いかけていた。どうやら夏の株がまた上がったようで、夏は好意の質問責めを食らっている。
 なるほど、友達と仲が良いといえば好かれるのか。俺はまんまと利用されたんだな。
 と言っても、春は彼女を作りに来ている訳ではないので痛くも痒くもない春は黙ってジュースを飲んだ。斉藤は復活すると夏から一番席が遠い春の前の席の子に目をつけたようで猛アピールしている。上手くいくといいな、と思いながらも完全に飽きてしまった春は、この空気から逃げ出したいので席を立った。

「ごめん、ちょっとトイレいって来るな」
「あ、うん、いってらっしゃい。」
「うん」

 女の子が興味ないように言ったのを聞いて春も適当に返事をしながら、春はトイレに向かう。とぼとぼと歩きながら時計代わりに携帯を見ると、メールが一件届いていた。送って来たのは桐間だ。そう、春は合コンに来る前に謝罪と斉藤から無理矢理合コンに連れて来られたことを長文で綴り送っていたのである。
 春はドキドキしながらメールを開けると、分かったともう怒ってないということが書かれて、可愛らしい絵文字のついた文面だった。春は嬉しくて帰ったら電話しようと考えてぽちぽちとラブレターを打ち始める。ちょっとだけここで休もうと、トイレの壁に寄りかかると肩を叩かれた。

「うわっ」
「!」

 春の声に驚いたのか、叩いた本人は少し離れて春を睨む。春もそんな彼を見て、あれ、と間抜けな声をあげた。

「夏くん、もトイレ?」
「え、ああ、まあな」

 先ほどの女の子達の前の余裕はどこに行ったのか、夏は目を泳がせながら春の隣に立ち尽くす。春は不思議に思い、瞬きをすると、夏は言いづらそうに口を開いた。

「お前もしかして今日女作ろうとしてたのか?」
「は?」

 何を言い出した、この人は。
 春が大口を開けて聞き返せば、夏はムキになって言い返す。

「なんで合コン来てんだよ! お前ホモだし、女に興味ねーんだろ。なのに来てるし。彼女作りに来たのかって聞いてんだ!」

 そんなに怖い顔で言わなくても、と思いながらも夏の勘違いが何度言っても変わらないことに呆れた。人の話を聞かないのは勝手だが、こんなだれが聞いているかわからない男子トイレでそんな話はやめて欲しい。春は怒りを抑えながら、夏をみた。

「今日は斉藤に人数合わせで無理矢理連れて来られたんだよ、だから別に彼女作る気はない。しかもおまえな、その言いか…」
「はあ!? んだ、それ!」

 夏を責める言葉を用意していたのに夏は話を聞かずに反論に出る。なんだそれと俺の方が聞きたいし、第一無理矢理連れて来られたのも夏が変なことを斉藤に言うからだ。なんかもう全部夏くんのせいだ、と半分投げやりに思うと夏は良かったと言いながら綺麗にセットされてる頭をかく。今から女の子の所に帰るのに何をし出したかと思えば、夏が笑いながら春を見た。

「んだよ、頑張る意味なかったじゃねーか。」
「え?」
「俺はてっきり春ちゃんが彼女作る気なのかと思って張り切って邪魔しに来たのに」
「はあ!?」
「あー紳士キャラ怠かったー、んーそうだなあいつらは斉藤に全部あげることにすっか。だからもう帰ろうぜ、な春ちゃん」
「はああ!?」

 春の無駄に大きい驚いた声を聞こえないふりしながら、夏は春の手を取りトイレから出る。そのまま出口を出てしまった夏に後ろから戻ろう、連絡しよう、などと言っても夏は聞かずに大股で春をどこへやら連れて行った。耐えきれなくなった春は、携帯を取り出して斉藤に電話を掛ける。ワンコールもしないうちに、斉藤が出た。

『あ、おい、遅いぞ。皆待ちぼうけてんだから早く来いよ。』
「ご、ごめん、それでさ…わ」
「後はお前に任せた、もう春を合コンに誘うな、能無し!」
『の、のうなし…!?』
「なにすんだよ!」

 携帯を取り上げられて好き勝手言われたので、春は怒りながら夏の手から無理矢理携帯を取り返す。その態度に腹を立てたのか、夏は目を細めて春を見下した。

「ってえ」
「お前が勝手なこと言うからいけないんだろ! ああ、もう、斉藤今日かなり掛けてたんだぞ、これで合コン台無しになったら…」
「あーあーうっせ、指図すんなよ」
「指図とかじゃなくて」
「いいから、黙ってついてこい」

 最近仲良く慣れたと思えば、こうなる。夏の縦横無尽さには呆れた。春は怒鳴ってやろうと思うが、このまま従えばどうにかなるだろうと手を引かれていく。すると、見覚えのある道まで来た。ここを曲がると、あそこだ。

「夏くんち?」
「上がれよ」

 そこでやっと手を離して貰えて春は静かに靴をぬいで、お邪魔しますと言えば夏が暗闇で少し笑う。

「お前毎回言うけど誰もいないし、言わなくてもいいんだぜ」
「誰も、いない?」
「ああ、俺の親は仕事ばっかだしなかなか帰って来ねーし、気にすんな。」

 そこまで言うと、当たり前のように夏の部屋に入った。春も二回目の夏の部屋に入り、畳の部屋に面白くなる。なんか夏に似合ってない所がまた面白い。笑ってしまいそうになってると、ガシャンと鈍い音がした。
 雨戸でも閉めてるのかとみれば、梯子が窓の外に現れる。これは折りたたみ式なのか、と変なとこで感心していると夏は身を乗り出してその梯子に手を伸ばして登り始めた。
 春が呆然としているのを見て、夏は春を手招きして呼ぶ。春は誘われるまま窓に近寄ると、下を見た。三階立てと言うこともあり、なかなか高い。梯子も頼りなく、登るのを躊躇って居ると夏が春の手を引っ張って梯子に手を掴ませた。

「落ちる、落ちる!」
「落ちねーよ、バカ。落ちたら下から受け止めてやるから、先行け」

 なんでいきなりこんな怖いことしなきゃいけないんだ、俺が何をしたっていうんだ!
 泣きべそをかきながら下から迫り来る夏に怯えて登り上げる。てっぺんに着いたときどうだ、と夏を見れば夏は春なんか見てなかった。夏は首を真っ直ぐにして上を見上げている。春はその真っ黒な瞳に映る輝きを見て、思わず空を見た。
 そこに広がるのは、闇の中に光り輝く星々達。

「わ、わ、わー!!」
「やっぱりな、今日は星が綺麗だと思ったんだよ。」
「すんげー!!」

 春が興奮しながらそらを仰ぐのを見て、夏は小さく笑う。そして、春の腕を掴むと近くに用意されていた椅子に座らせた。そして前のテーブルに、夏はポケットからミルクティーを置く。いつ買ったんだ、と思ったがそれよりも自分の位置を知らせるように光る星に目を奪われた。幼稚園のころに頭に浮かべるだけで精一杯だった星に包まれるなんて、嬉しくて体が昂ぶる。

「おおお、なにあれ、なにあれ! かっくいー!」
「赤いのがアルクトゥールス、白いのがスピカ、見えにくいけどあれがデネボラだ。春の大三角っていうんだとよ」
「へー、こんなに綺麗に見えるもんなんだな! あれは名前ないのか!?」
「ないと思うけど、あいつも結構綺麗だな」
「だよな!」

 はしゃぐ春に夏は静かに返す。春は歓喜の声をあげながら星を見ていたが視線を感じて夏の方を見た。夏は春と目が合うと、顔を逸らす。春は夏の肩を揺らした。

「なんだよ」
「いや、喜んでくれたなら良かった。今日空綺麗だったし見れると思ったんだ」

 言われて前に夏が言ってた事を思い出す、天気のいい日また来い、と言われたがまさか本当に連れて来てくれるとは思わない。斉藤には悪いが愛想笑いばかりの合コンより、今の方が何倍も楽しかった。春は嬉しくなって、笑いながら夏の事をつつく。

「うへ、何それ! 夏くんの事だしなにか裏あるんだろ、おい吐いてみろよこのこのー」
「…そんなに見返り求められてぇなら求めるけど」
「ごめんなさい」

 謝ると夏は目だけ笑って、また空を見る。そして、なあ、と春に話し掛けた。

「なに?」
「まだ、桐間理依哉だっけ、あいつの事好きなのか」

 予想もしていなかった質問に、星も見れずに春は夏を見る。だが夏はずっと空を見ていて春を見るつもりはないらしく、春も空を見上げた。

「うん、多分、つーか今んとこ絶対ずっと好きでいると思う。」

 そう言いながら手を伸ばす。触れられそうで、触れられない、このもどかしい距離最初の桐間との距離に似ていた。本当に幸せそうに言う春を夏は盗み見して、夏は笑う。

「へっ、そーかよ。つまんね、もうお前であそぶのやーめた。」
「ああ、そう…え!?」
「だから、付き合ってんの無くしてやるよ。あいつと勝手により戻すなり、勝手にしやがれ。」
「いいの、良いの!?」
「ああ、飽きたしな。」
「やったああああ、ありがとう、夏くん!」

 春は手を伸ばしながら、大声で感謝の言葉を叫んだ。夏は聞き流すだけでそれ以上は語らず、春の声だけが屋上に響く。


「んじゃ、お邪魔しました!」
「だから挨拶いらねっつの。」

 あの後、二人は時間も忘れて話に浸って、しばらく見ていた。和解したということもあり、二人は友達になれたと言っても過言ではない。
 じドアを閉める時、春がそうだ、と声を上げた。

「なんだよ」
「今度プラネタリウム行こう!」
「は?」

 夏が聞き返せば、春は照れながら言う。

「友達になれた記念。昔の俺は夏くんと友達になれるなんて思ってもないだろうから」

 ね、と押す様に言われて、夏は考えもせずに頷いていた。約束だぞ、と春はドアを閉めて帰っていく。夏はゆるゆるとそこに座り込んだ。
 本当は星を見た後襲ってやろうかと思っていた、最後くらい足掻いてやろうと。だが、出来なかった。春の桐間への愛を見せつけられてしまったし、なにより春は夏を信用していたから。その信用を裏切りたくないと弱虫な自分が止めたのである。

「ちくしょう」

 プラネタリウム行こうなんて、とんだバカなこと言ってくれる。まだ、まだ、まだ、足掻いて居たかったのに、友達なんて望みたくなかったのに。

「フられた」

 自分に深く深く印を付けるように、春の言葉が繰り返された。始まったばかりだった、本気だった恋が音も無く消える。二度目の大きな失恋、夏は一生、彼と見た星を忘れることは無いだろう。




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