▼もし理依哉が功士を(そういう意味で)好きだったら

「ただいま」
「お、理依哉、おかえりなさい」

 肩にかけていたかばんを下ろしテーブルに置きながら、理依哉はイスに座った。いつもより早い帰りに功士は嬉しく思いながら、料理をしている手を早める。
 最近は理依哉が春と仲良くなったので、友達の心配をすることはない。帰りも遊んでばかりで遅くなるが、バイトばかりで遅くなっていたときよりはいいと思った。

「まだ出来ないの?」
「あぁごめん。今日帰り遅くてさ」

 仕事がなが引いてしまった功士は、早めに帰ってきたつもりではあったが、やはり理依哉が帰ってきたころには料理は出せない。功士はぐつぐつと煮える野菜たちを見ながら、必死に早く煮えろと念を送った。だが念だけではなかなか終わらず、しびれの切らした理依哉は立ち上がる。
 そしてノロノロと歩きながら功士の後ろにぴったりと付き、肩に頭を乗せた。理依哉はただおかずを覗こうとしただけだろうが、功士は久々に触れる理依哉に反応してしまう。耳のあたる息がもどかしい。

「ち、近いよ。」
「くっついてるんだから当たり前でしょ」
「そうだけど、っ、清道くんに触られて気付いたんだけど、僕、耳弱くて」

 わざと首もとを抜ける指がくすぐったくて、功士は下を向きながら耐えようとするが、理依哉はぴたりと止まった。何故止まったのかはわからないが、功士はいたずらがなくなったことを良いことに、ほかの作業に取りかかろうとすると行く方向を手で遮られる。
 いつの間にこんな手が大きくなったのかな、と功士はのんきなことを考えながら手のしたを潜ろうとした。だが、次は足で壁を蹴られて行けないようになってしまう。驚きながら理依哉を見ると、彼の仏頂面は拍車がかかっていた。

「そっち通りたいんだけど、退いてくれるかな。」
「やだね」
「あは、…なんで怒ってるんだい」

 聞かずにはいられなくなり功士が聞くと、理依哉の手が功士の耳に触れる。最初は撫でるだけで我慢は出来たが、爪を立てられ軟骨を滑り抜ける感覚に反応せずにはいられない。

「弱いって、言ってる、んぁ、じゃないか!」
「へー、はじめて知った」
「やめ」

 逃げるように首を振るが顔は固定されてどうにもならないし、動く手を掴むが功士よりも理依哉のほうが力は強いので離されることはなかった。続けられる拷問に、功士は息をあげる。
 息子にこんなことされて、僕はなにを狼狽えているんだ!
 と思いつつも、敏感なのは仕方がなかった。嫌だ嫌だと顔をそらす功士に、理依哉は動きを止める。そして、冷たい目でこちらを見た。

「妻子持ちの男となにしてんだよ」

 功士は壁に手を付きながら理依哉を見返す。なにをしたって、ただ清道が功士の耳を引っ張った時に弱いことに気づいただけだ。そこに、妻子持ちのなにが関係するのか。

「いや、別に。僕は男だし、話したって清道くんは浮気にはならないよ」
「そうじゃなくてさ…もういいや。早く飯つくってよ。」

 まるで話が通じない、とでも言いたいかのようにあきれ返った理依哉は、いつもの通りに戻った。見せた冷たい目は、もう消えたようで功士は安心する。
 功士を侮蔑するかのような眼差しに、息子といえど怯んでしまった。蛇に睨まれた蛙のように、一瞬でも動けなくなったのを思いだし、自分が老いたかと思う。そういう問題ではないのだが。

「あ、お腹すいてるからそんなに苛立ってるのかい? それならそうと言ってよ!」
「はいはい」
「理依哉サラダ運んで!」
「ち、使いやがって」

 鈍感な功士は今日もいつもと変わらない日々を過ごすのだった。



(そういえばあの新村とかいう男なんだけど、まだ仲がいいの?)
(ん、ああ、新村くんか。うん、仲良いよ。またつれて来てもいいだろう? 彼健康に気使わないから心配で)
(…勝手にしろ!(襲われてもしらねーぞ))



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すみません、どうしても息子×父を書きたくて、どうしようと考えているうちにあれ理依哉×功士でも良いんでない?と考えた末にこんなものが。りーはるも好きだけど、功士大好きな理依哉もいいなっつー話です。あれ、りーはるよりもラブラブなんですが、何で?





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