清野咲也視点


(やーっぱり、会田さんかっこいいな。)
 俺は頬杖を付きながら、ぼんやりと会田さんを見る。たばこを吸いながら上司と話しているのは妬けるけど、笑っている会田さんは、格別かっこよかった。
 息抜きと飲んでいたミルクティーは、飲み進めていないのに最初買ったときより随分と冷えている。これも会田さんを見つめているからだろうな。さて、飲もう。コップを手に取り口に運ぶと、今まで凝視していた会田さんと目があった。むせそうになるが、すぐにコップをおき冷静になりながらお辞儀する。すると会田さんはガラス越しに、すこしわらった。
(わわわわ、笑ってくれた! えーん、もう死んでもいいよ!)
 完全におかしな思考回路とわかりながらも、思ってしまう俺はかなり重症だが、それでもドキドキした事実は隠せない。また小さくお辞儀をして、そこから逃げようとしたのだが…

「カオ真っ赤だよ、清野クン」
「ひぃ!」

 耳元で聞き覚えのある奴に、息を吹き掛けられた。驚いて変な声を出せば、そいつは笑いながら俺の飲み物を取り上げる。

「んぁ? あったかくねーなコレ」
「うるさいな! 井島田にあげてないから!」
「ああ、そうだよ。奪ったんだし」

 お前のモノは俺のモノ。と素晴らしい笑顔で井島田は微笑んだ。そんな笑顔、同僚の女の子が向けられれば喜ぶんだろうな、と客観的に考えながら、その場を逃げようとする。だが、さっきのように井島田は通せんぼして、逃がしてはくれなかった。

「なんか用?」
「そこに会田サンいんのに、ここから退いていいの? 会田サン見るのに、ベストポジションじゃん」
「な!」

 見ていたのを、ちゃっかり知っていたようで、井島田は顎で会田さんをさした。やめろと言いたいが、なんだか恋しているのがバレてしまいそうなので平然を装った。

「なにが? 俺、会田さん見てないん…」
「さっき笑われて真っ赤になったくせによ」
「………」

(どこまで知っているんだ、こいつは!)
 なんだか俺が会田さんを好きなのも知っていそうで怖くなりながらも、極力会田さんの方に目を向けないようにしながら手招くと、井島田は近寄ってきた。

「な、なんか、会田さんをこれ以上見てたら、恥ずかしくなるから」

 なんで逃げるのか、の問いに正直に答える。本当は答えたくは無かったが、井島田の場合、言うまで首を取るとか、わざと会田さんに話しかけるとか意地悪をしてくるからだ。
 だが、井島田は俺が答えたのに不機嫌になってしまった。訳がわからない。
(た、たしかに! 同性を見て恥ずかしくなるなんて気持ち悪いかもしれないけど、そんなあからさまに顔に出さなくても…)
 意地悪と言っても、この仕事場でなんだかんだで一番仲がいいのは井島田であるし、軽蔑されるのは嫌だ。思った時には井島田は俺の首をとると、若干絞めてくる。

「ちょ、いとうだ!? ギブギブー!」
「うっせー! お前は乙女か、ああ? 頭冷やせ、この馬鹿が!」

 バカなんて知ってるよ、と思ったが言い返したらまた何か言われそうなのでそのまま離してくれるのを待った。すると、さっきの会田さんを思い出してにこにこしてしまうと、井島田がぴたり、と攻撃を止める。不思議に思い、見上げると、井島田は俺を見ていた。

「ん? どうした」
「い、や。なんかお前、今の表情、なに」
「え、なにが」
「…っ、離れろ」

 今まで絡まっていた腕は勢いよく俺を離した。そっちからつかんだくせに、と思いながらも休憩の時間が終わったので、俺はすこし残ったミルクティーを捨てて、変な井島田と共にオフィスに戻った。









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