清野咲也視点

 井島田の家につくと、そこは俺よりもちょっと贅沢してそうな家具付きだったが、予想以上に平凡な家であった。想像では芸能人が住むような綺麗なマンションに住んでいて、部屋も24畳だとかふざけた感じかと思ったが漫画のようにはいかないらしい。
 井島田も金銭面では完璧には出来ていないと思うと、知能では並べないくらいの差があったがここでは仲間になれる気がする。こんなとこに住んでるんだ、と嬉しさで半分笑いながら言えば井島田は、外に出すぞ、なんて笑って来た。ごめんなさい。

「井島田、すまなかったな。」
「いえ、こいつの世話は慣れてるし、会田サンは悪くないですよ」

 謝る会田さんに井島田はじとり、と俺をにらむ。俺だってこんなことになるとは思っても見なかったもので、逆に被害者は俺でもある。俺はそう思いながらめをそらした。
 井島田は皆のスーツの上着を受けとると、ハンガーにかけて回りを見渡す。

「意外とびしょびしょだな。お風呂入ります?」

 用意してありますよ、と井島田は会田さんを見た。先に先輩を入れるとは、さすが井島田である。会田さんは遠慮がちに井島田を見たが、井島田は着替えをさっさかと用意していた。それを見て、会田さんも入る気になったようだが、ぎこちなくネクタイを外す。
 よく考えてみれば、会田さんと井島田は特別仲が良いというわけでない。むしろ俺がした失敗を井島田が怒り、それを会田さんが謝るという先輩後輩逆になるような不思議な関係が生まれていた。そのためか、会田さんは後輩相手だというのに、井島田には控えめである。
(俺のせいなんじゃん…)
 俺はやっぱり会田さんに迷惑をかけていると、自覚することとなった。
 俺が二人を観察している間、井島田はもう着替えを用意し終わったようだ。

「小さいかもしれませんけど」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
「いえ、ゆっくり入って下さい。清野は…俺と一緒に入るぞ」

 少し笑いながらお礼を言う会田さんに見惚れていると、井島田がふとこちらを見ながらそう言う。

「え、なんで」
「電気代もったいねーし、いいじゃねーか。同期同士語ろうぜ」

(同期、なんて思ってもないくせに。)
 いつも俺を見下す井島田にそう思うが風呂に入れるだけ満足である。不服ではあるが仕方なく頷くと、井島田は満足そうに雑誌を広げた。

「二人で、入るのか」

 ぽつり、と上から降ってきた水滴と、小さい声。上を見ると棒立ちしながら会田さんが俺を見ていた。怖いくらい近いのだが、どうしたのだろう。
 いままで見たこともない表情になにも言えないでいると、代わりに井島田が笑いながら答える。

「そうですよ、もしかして会田サンも一緒に入りたかったですか?」
「…違う。ここの地主は井島田な訳だし、迷惑かかるなら俺と清野が二人で入ろうかと。」
「大丈夫です。それより早く入ってこないと風邪ひきますから、ほら。」

 井島田は気を使っているのか会田さんの背中を押すと、会田さんは何か言いたげだったがそのままバスルームへと入った。
 それまで何も発していない俺は内心、助かったと思う。確かに会田さんとお風呂に入って、裸の付き合い、より仲良くなれるのならば良いが、俺も男。好きな人に裸を見られるのは恥ずかしいし、なにより見るのは自分がどうなるか分からない。
 一安心しながら、片付けられている棚に手を伸ばし適当な本を取ると、俺はベッドに背を向けてめくった。井島田も自然と隣で雑誌を読む。暫く本を見ていると、井島田の視線がこちらを見た気がしたがそのままにしておいた。
 15分くらい経ってすぐ、会田さんは上がってきた。なんだかキョロキョロしていたが、井島田はお構い無くすぐに風呂へと向かうので俺も一緒についていく。

 服を脱いで、井島田の腹筋が見えて少し嫉妬する。なんだこのパーフェクトな体は、嫌みか。下は出来るだけ見ないようにしながら、井島田が先に湯船に入ったので俺は蛇口ををひねった。
 シャワーからお湯が出たのを感じそのまま洗っていると、視線を感じる。湯船の方を見るとやはり井島田が面白そうにこちらを見ていた。

「な、なんだよ」
「いや、筋肉ねーし下腹出てっし…ちっちゃいなあって思って」

 そう貶す言葉をいいながら目線をゆっくりと下げていき、井島田はある点を見て俺を嘲笑う。
(俺、もう井島田とお風呂入りたくない。)
 井島田に尻を向けながら、俺はシャワーを浴びた。
 だがすぐにすべて洗い終わってしまう。なかなか湯船に行けずにいると、井島田がまた笑ったのがわかる。顔だけ向ければ、井島田が湯船からあがり、こちらに向かってきた。

「拗ねんなよ。ちっちゃい方がかわいいから大丈夫だって」

 まるで子供に言い聞かすような優しい声で呟き、俺の頬にキスをする。
(かわいいってなんだ、しかもなんでキスするんだよ!)
 言いたいことあるのに、びっくりしすぎて声に出せずかたまっていると、井島田は俺のお腹の肉をつかんだ。

「なっ」
「この肉も俺は好みだな」

 にやり、と笑う井島田。きっとさっきのも俺の反応を楽しんでいたのだろう。そう思うとくやしい気がしてきて、やり返したくなる。だが井島田は俺を簡単に湯船に入れると、シャンプーにてを伸ばして蛇口をひねった。
(くそうシャワーを浴びてる様も、もんくが言えないほどかっこいい。)
 ずるいと思いながら水をぶくぶくと鳴らせば、井島田はちょっとやさしい顔で俺を笑うのだ。








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