会田心視点


「会田さんっ! 帰り空いてますか?」

 帰ろうとエレベーターを待っていると、清野が嬉しそうに話しかけてきた。なぜ嬉しそうなのかは分からなかったが、ああ、と言えばもっと嬉しそうにしたのでもう考えることも止めた。どこか行きましょう、その答えに少し悩む。昨日作ったカレーが残ってる、大量に。外食は控えたいがあんな顔されたら断れるはずもなく、黙って頷いた。
 さっそくきたエレベーターに乗ると、ボタンを自分が押したいのか俺がボタンの前に乗り、わざわざ前に乗り込んでくる。そして押すと、満足そうにするので、なんだか子供を相手している気分になった。

「ふ、」
「? なんですか」
「いや、なんでもない」

 言えば清野はそうですが、と先にエレベーターから出る。玄関から出ると、もうすっかり暗くなっていた。そういえば、いまからどこに行くのだろうか。疑問に思い、清野を見れば困った顔をこちらに向ける。
 決まっていないと言うかんじだろうか。俺は笑ってしまいそうになりながらも耐えて、清野をみた。

「もし良かったらなんだが、俺の家の家に来ないか。カレーがたくさんあるんだ。一人じゃ食べきれない」

 どこに行くわけでもなく、歩き出していた清野は止まり、驚いた顔を見せる。まあ、こんなの俺らしくはない。家に誘うのも、慣れてないのがバレバレだと思うくらい、気がきいた言葉を出せなかった。
 そんな情けない俺のかばんを持った清野は、戸惑いながらおれを見た。もしかして嫌なのだろうか。やっぱりカレーはダサいのか。もう原因はカレーでしかない。パニックになりすぎて、カレーにしか頭が行かない俺に、清野は口を開いた。

「行って、良いんですか?」

 何故か泣きそうなくらいの声で俺に聞いてくる。俺が理解出来ずにただ頷くと、泣きそうな顔が明るくなり俺の手を掴んだ。

「是非! 行かせて下さい」

 可愛らしい笑顔を俺に向けて(そうとしか表現出来ない)、先程の顔は既に消えている。なんだ、嬉しく思ってくれていたのか。確かに今までの清野を考えて、嫌がるなんて考えられないのになにネガティブになっているんだ俺。
 そのあとルンルン気分な清野を車にひかれないようにしながら、俺の家へと無事連れていった。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -