「うえっ」

 返された紙を見て春が呟くと、近くにいた桐間が覗き混んで自分のテスト用紙を取りに行く。その余裕な表情にむかつくことも出来ない春は、それほど沈んでいた。自分の席に戻り沈んでいる春を見ながら、桐間は隣へと帰ってきて受け取った用紙揺らしながら、足を組んで春に話しかける。

「何点?」
「見ただろ、さっき! 27点」
「…なんで留年しないか不思議。」

 桐間はそういいながら、頬杖をついた。その片手に持っている紙を、春は横目でみる。赤く書かれた数字、それを見て、黒板と交互に見た。
 黒板に書かれた最高点、98点。桐間のプリントに書かれた文字と一緒である。

「な、おま、頭良すぎるだろ!」
「普通だろ」

 言っている様からして、本当にたいしたことないと思っているのであろう。春は悔しく思いながらも、近付いてきた浩に目を向けた。浩は苦笑いしてるが、その持っている手から見える点数。94点。

「浩、シネ。なんかお前はむかつく」
「…扱い違いすぎないか」

 落ち込んだように浩が言うと、桐間は笑った。それから少したって龍太の絶叫が教室に響く。
 ついでに龍太の点数は、18点である。


‐‐‐‐‐‐

 一通りのテスト返しが終わった。あとは午前中授業なので、そのあとにある夏休みを待つばかりである。春はのびのびと体を伸ばしながら、桐間と浩、龍太などと階段を降りていた。

「やっと終わったな」
「あとは遊びしかないな、桐間遊び行こうぜ」
「絶対無理、お前暑苦しい」

 浩がいった言葉に、嬉しげに龍太が答えて桐間に言うと、桐間は丁重に断る。それに反論しようとする龍太の口を塞ぐ浩は、あ、と声をあげて春を見た。
 その視線に気付いたようで、春は隠れるように桐間の後ろに行くが浩は構わず口を開く。

「しゅん」
「う」
「サッカー部、行くんだぞ」
「…はーい」

 春は返事をしたが、行かなそうな顔であった。昇降口につくと浩はため息をつきながら、下駄箱に手を掛ける。春も同じように開けようとすると、その手を誰かが掴んだ。
 その手は桐間である。

「サッカー部、だったの?」

 春はそうだ、と頷くが桐間はその手を離そうとはしなかった。どうやらその答えが気に食わないようで、手を掴む力が強くなる。

「しゅん、サッカー部いくだろ?」

 そんなことも知らず、龍太は頭に手を組みながら春に声をかけた。桐間の方には目を向けれないので、龍太を向き合うように言う。そのせいか、手を捕まれているのは見えないらしい。春が返事すると、浩と龍太はまた明日、と帰って行った。どうやら、春と桐間はセットと思ってるらしく桐間にもそう声を掛けて行く。その瞬間掴まれた手も離された。
 掴まれた手、見られなくてよかった。
 春はほっとしながら自分の手を見る。桐間もその手を見てから、目をそらした。

「なあ」
「ん?」
「なんかさ、お前ばっか俺のこと知ってるよね」





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