学校の帰り道、さっさと帰る桐間を目で追いながらも三人で帰ることにした龍太と浩は、春になにがあったか聞く。もちろん春が傷付かないように優しくだ。すると春は目が虚ろになりながらもすべてを話しだした。聞いた二人は言葉を失う。

「「えぇえええ!? 桐間に告白しただと!?」」

 そして吐き出した。どこまで気が合うのか、龍太と浩が驚いたのも言葉を発したタイミングも一緒である。そして小さな声で言うのも忘れずに。
 春は今にも灰に還りそうな顔をして、しっかりと頷いた。どうりで気まずいわけだ、と納得する。
 でもまさか春がこんなに早く告白するとは、二人とも思ってもみなかった。春が桐間を心底好きなのは知っていたが、友達を大事にする春も知っている。だからなかなか告白はしないであろうと、呆れ半分安心していたのだがそれはちがったようだ。忘れていた、考えるより行動に出る春のことを。
 龍太は髪型を直しながら、春に問いた。

「で、桐間はなんて?」
「…最後まで告白できてない、けどバレたかも」

 それはそうだろう。いつもヘラヘラしている春が、いきなり真面目な顔をして好きなどと言えば誰だって本気に受けとる。しかも、春の場合、弁解もろくにできていなかった。
 本気の告白とバレた上での今の二人の感じは、さすがにまずいと浩は思う。あんだけ春になついていた桐間が、今はあんなに春を避けているなんて、と。
 だが実際は二人が考えるほど深刻ではない。桐間は避け返しているだけであり、自分の本心で避けたいわけではない。なんとも不器用な人間である。
 そんな桐間の心情など知らない春は、自分が避けていることを棚にあげ、桐間が近くにいないことをさらに悩んでいた。

「やっぱ言わないほうがよかったのかな…」

 呟く春に龍太は困ってしまう。自分達が言ったほうがいいと急かしたわけでもあるし、二人の仲をこわしてしまったと思ったからだ。
 逆に落ち込みはじめる龍太に、浩は頭に手を置く。龍太が見上げると、浩は春に微笑みかけた。

「そんなわけない、しゅんは気持ちを伝えられてよかっただろ? いまさら、後悔するなら良かったと思った方がいい。それに、龍太は龍太でしゅんのために頑張ったよな」

 今度、浩は龍太を見ながら微笑んだ。置いていた手で、龍太の頭を宥めるように撫でる。龍太が頷くのを見て、浩は安心した顔で歩く。
 春はそれを見て微笑ましいはずなのに、笑えないでいた。それがとても嫌だった。こんなの仲がいい二人を妬んでいるようで。

「ごめん、俺先帰るな」

 春は余裕がないようにそう告げた。いや、余裕など桐間のことになるとすこしもない。龍太と浩はなにも言えずに、それを見送った。





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