「しゅん、テストが終わったらサッカー部に行けよ。三年の先輩にもお礼を言うのが礼だろう。」
「うへー、はいはい」

 真面目な浩に聞かれてしまったら帰りたくても、帰らせてもらえないだろう。春はめんどくさそうに言うと、浩はあとネクタイ曲がってる、と直し始める。
海飛はパンを頬張りながら、龍太はジュースを飲みながら浩を見て何故だかお母さんを思い出すのだった。

‐‐‐‐‐


「おい馬鹿、今日少し付き合え」

 先生が来て、SHRが終わり生徒達がゾロゾロと帰るなか、桐間が春に声を掛ける。春は肩にかけた鞄を落としそうになる。昼休みの浩の言葉を思い出した。
 ここここ、これって脈あり!!
 周りを見れば龍太がにやにやしながら見ていて、浩は何故か目元を押さえながら親指を立ててこちらに向けている。

「あああ、あの桐間」
「なに、ほら早くいくよ」
「うん、うん分かった!」

 いいよ、ともいっていないのにどうやら行くことは決定事項のようだ。まあそんなことを気にしていない春は浩と龍太に大きく手を振ると、桐間とまさかの(勝手に解釈しているのだが)デートに行ってくることにした。
 だが、桐間の後ろについて行っても、なかなか後ろを向かない桐間を不思議に思う。けれど気分を損ねたくはないので黙ってついていくことにした。外に出ると、やはり夏の暑苦しい空気が付きまとう。春は逃げるようにまだ涼しいポケットの中に手をいれた。
 何も話さなかった桐間は校門の近くに行くと、いきなり立ち止まる。しばらく待ってみたがやはり顔はこちらを向かない。これは自分から行くしかないと、顔を覗かせようとすると、桐間は風を切るような音を出していきおいよく振り向いた。
 いきおいの良さに驚いたが、また驚く。桐間の顔は真っ赤であるし、汗は尋常じゃない。たしかに今は暑いが、そんなにか。

「桐間? どうし…」
「笑わないでよね!」
「…え?」
「いいから、今から、笑ったら殺す!」

 春はいきなり出された条件に、なにも考えずに頷くと、桐間はまた前を向いて歩き出してしまった。殺すまで言われてしまったので笑わないように口を押さえるのだが、今から何が起こるのかと思うと怖くなる。
 春があれやこれやと考えていると、桐間がぼそり、となにか呟いた。春は聞き返しながら近寄ると、桐間はだから! と大きく口をあける。

「功士の誕生日プレゼント、一緒に選べって言ってんの」

 春はすぐに理解した。
 ああそうだ、7月は功士さんの誕生日だ。
 小さい頃からよくしてもらっている功士の誕生日くらい覚えている。誕生日プレゼント買わなきゃ、と思うと、一度動きが止まり春は桐間を見た。
 いま、なんて言った?
 桐間はやっぱり顔を真っ赤にして拳を握っている。きっと今まで買ったことがなかったからいいものが思い付かず、春に聞いたのだが、頼むのも買うのも恥ずかしいのだろう。
 春は自分が頼られたことと、功士を気遣う桐間を嬉しく思い、頬を緩める。
 だが、刹那、桐間は笑ったのだと捉えて春を半殺しにしようと思うのだった。





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