「っていうことがあったんだ。桐間酷くないかー?」

 春が小さな声で浩と龍太になだれ込みながら言う。
 昼休み、桐間は一人で昼寝するとどこかへふらりと行ってしまい、春は今だと、朝あったことを浩と龍太に話したのだ。心底恥ずかしそうに話す春を見て、二人は目を合わせて、口を開いた。

「「ノロケか」」

 いつ言い出そうかと伺っていたらしく、やっと言えたと二人は満足そうにする。春が聞き返せば、龍太が今にも怒りそうな顔をして言った。

「あのなー! どこの高校男子が電車の中で、ラブラブしてんだよ!」
「そうだ、しゅん。しかもな、前の桐間ならお前が怒ろうと関係なかったが、気にしてくれたとは。かなりの脈ありだぞ」
「そーだそーだ付き合え! むしろ籍入れろ」

 春は次々と言われる言葉に返せず、そのまま話は進みだす。春はやっと、言われている意味が分かり、龍太を殴ると、立ち上がった。が、何か言う前に眼鏡が外れてしまい、床に落ちる。
 二人は馬鹿だ、と春を見届けるが、春は眼鏡を掛けなおすと二人をみた。

「いいいい、良いか!? 俺らはそんなのないの! めちゃ良い友達っ!」

 顔を真っ赤にして言う春は説得力がない。しかも自分からすきだから近付きたいと言い出したのに、矛盾していないか。
 龍太は言おうとしたが、自分達が背中を押さなくても事は順調に進んでいる。もう口出ししないことにして、黙って浩を見た。浩が春を見守っているのを見て、少し妬けるな、と思う龍太だった。

「しゅんー」

 春は落ち着き席に座ろうとすると、扉の方から声がする。三人ともそちらを見れば、パンを持った海飛が困った顔で来たのが見えた。海飛はパンを机を置くと、近くの椅子を持ってきて、お邪魔するよ、と座る。
 春は自分が呼ばれたので海飛を見つめれば、海飛は苦笑いしながら見返した。

「さっきサッカー部の顧問…えーと」
「溝呂木」
「そうそうそいつ! 溝呂木にさ、春にテスト終わったら来いって言っとけって言われてさ」
「げ、まじかよ」

 春が嫌な顔をすると、海飛はそうだろうなと頷く。それを見ながら浩が椅子に手を掛けて呆れたように春を見れば、見られた方の春は眼鏡を掛けなおすと、ため息をいた。
 春はサッカー部に入っている、が何度もいうように幽霊部員であり、あまり行ってはいなかった。辞めてもいいのだが、先輩が春を可愛がってくれるし、なによりもサッカーが好きだ。だから気が向く時にサッカーがのびのびと出来るように、サッカー部は辞めないでいた。
 だが、お気楽な春とは関係なしに、今年の夏、つまり一ヶ月もしないでサッカーの大会がある。三年はもう引退してしまうので、引っ張るのは二年になるわけであり、春の世代になるのだ。
 春は運動神経だけは良い。一年ではあったがレギュラーは取れていた。その為か顧問の溝呂木には目を掛けられていた。それが面倒で、サッカー部に行かないというのもあったのだが、溝呂木はそんなことは関係ない。普段から春をサッカー部に来いとはいっていたが最近では酷くなった。きっと大会が近いからか、普段来ない春でもまだ有能な選手には部活に来てほしいのだろう。





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