次の日は、直ぐに終わった。春は1日悪いこともなければ、良いこともない。強いて言えば、悪いことは日直でしかも帰り掃除をしないといけないことであった。良いことはその相手が金子だったこと。
 同じ日直の金子は笑顔が可愛らしい、奥ゆかしい女の子であり、男子からも人気がある。春も男、そんな金子と日直になれたのはうれしかった。

「しゅんくん、そっちは終わった?」
「終わった。じゃあ日誌書くか」

 春は日直日誌を机の中から出すと、汚い字で適当な文字を並べて行った。それを見て、金子は笑う。

「しゅんくん、見た目は字綺麗そうなのにね」
「そうなんだよー、勉強も駄目だし。まぁ見た目というか、この眼鏡のおかげだな」

 冗談のように言えれば金子はふふふ、と可愛く返した。可愛い、と春は思いながら、早々と日直日誌を書き終える。金子はお礼を言った。

「あ、しゅんくん。これ、戸河井くんに渡してくれないかな?」

 渡されたのは綺麗な封筒。春がラブレターだと気付くには、充分である。なんで自分か、など直ぐに分かった。浩と仲良いのは、春。春は何食わぬ顔で手紙を受け取ると、金子は恥ずかしそうに教室を出ていく。
 自分の机に座り、手紙をまじまじと見る。はじめて見たラブレターと言うものに、春は目を輝かせた。今時珍しい。中身を見てしまうか、いやいや、それじゃあ金子さんに悪いし、でも。物音がして、考えが止まった。手紙から目を反らして前を見ると、そこには浩が居る。春は浩に近寄ると、慌てて手紙を押しつけた。

「これ、金子さんがお前にだって。モテモテだな、このやろう!」

 春がからかうように言うと、浩は手紙を受け取る。開こうと手を掛けた浩に中身は、と聞こうとすると、浩は眉間にしわをよせた。

「俺、この人知らない」

 だからなんだ、と春は思う。だがすぐに思い出す、浩は告白が苦手だった。
 浩はシュッとした顔立ちに男らしい身長、クールであり運動も勉強も出来るため、昔から女の子に注目を浴びていた。だが、浩は女の子が苦手であり、話したこともない。それなのに関わらず、告白してくる女の子は少なくはなかった。浩はそれを見て、何も知らないのに何故告白する、と少なからずとも怒りを感じていたのだ。
 春は思い出しながらも、それでは浩に一生彼女が出来ないのではないかと思った。いつもは浩が世話をやいてるが、恋愛のことになると逆に春がまるでお母さんのような世話焼きをする。しかたない、と浩から手紙を取ると、春はにやりと笑った。








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