春達が二人で教室に入ると、龍太と浩以外はざわついた。やはり、いままで来てなかった桐間が来たこともだが、春と笑いながら入ってきた桐間に驚いたのだ。そのことには、龍太と浩も驚いたのだが。
 桐間が席に座ると、春はそれを安心したように見届けた。それを見て今まで固まっていた龍太もうってかわって、にやにやと笑いながら、桐間に近付き、桐間の前の席に腰をかける。桐間は相変わらず春以外には一緒の態度で接するようだ。

「きりまくん、おはよう〜」
「……」

 案の定、無視しながら、カバンから教科書を出す桐間に、分かるくらいに龍太の笑顔にひびが入った。そんな龍太を、こりないな、と浩が苦笑いしながら引っ張る。周りはまだ、ざわついていたが、その話題の的の本人は気にしていないようだ。
 春はカバンを机におくと、先ほど龍太の座った席に座り、桐間に笑いかけた。

「一番後ろっていいなー!」
「…まぁな」

 いままで重く口を閉じていた桐間が口を開いたと、クラスが注目する。春は何者なんだ、まずあいつもなんなんだ、皆が思った瞬間だった。

 その二人を見て、龍太は机に座りながら足をくんだ。隣の椅子に座っている浩の肩に手を掛けて、指をさした。

「よかったじゃんな、しゅんのやつ。」
「ああ」

 浩は下を向きながら笑う。予想外の反応だった。
 龍太は浩の顔を見て、あからさまに驚いた顔をする。浩は不思議そうに、龍太をのぞきこんだ。

「なんだ?」
「浩は、しゅんのこともういいのか」

 浩が春を好きだったことは知らないが、ひどく執着していたのは知っている龍太は、今の状況を父親のように嬉しそうに見ている浩に驚いたのだ。浩は机に手をかけた。

「俺は春を見守る、だけど手出しはしない。春にはもう俺はいらないから。依存も、もうしないようにしたんだ」

 言う浩は悲しげもなく、心から笑っていて、龍太は戸惑いを見せる。この前と違う反応に、どうしていいかわからないからだ。組んだ足をおろし、ぶらぶらさせながら、龍太は曖昧な返事をした。
 そんな龍太を浩はおかしそうに笑いながら、肘を立てて顔を置くと、また二人を見る。

「あの二人を見て、思った」
「ん?」
「居た時間って関係ないんだな。俺はお前ともっと仲良くしたいと思った。なぁ、」

 「龍太」、浩の口から発せられた自分の名前に、龍太はしばらくして、嬉しそうに目を細めるのだった。





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