携帯のアラーム音で、心地よく目を覚ました。時計を見れば、起きたかった時間、6時半である。ぎりぎり起きているのより一時間以上も早い。春は寝汗をかいたTシャツを脱ぎながら部屋を出て、洗面所に向かうと、そこには歯ブラシをしている清道が居た。
「おはよう」
「うん、おはよう」
「今日は起きるのが早いんだな!」
無駄に元気な清道を少し寝ぼけている春は、聞き流すように頷いた。そんな春に清道は悲しく思いながらも、とぼとぼと出ていく。だが、春はそれどころじゃない。
桐間もう起きたかな、起きてないなら、やっぱりおこしにいきたいな。昨日嫌がられたけどまあ、いいか。功士さんに聞いてみないと、家に入れないからな。じゃあ功士さんに会わなきゃ。
ならば、功士さんはいつ頃仕事に向かうのか聞かなければいけない。春は顔を洗って歯ブラシをし終わると、リビングに向かった。そしてまた居る清道。先ほど流したのは春だが、春は清道の隣に座る。
「ねー、父さん」
「なんだ、どうした」
「功士さんって朝何時に出るの?」
春が隣に座ったことと、話しかけたことにより清道のテンションは上がっている。また嫌がられては、と思いポーカーフェイスを意識しているようだが、見事に崩れていた。だが、春の質問を聞いて、清道のテンションは一気に下がる。
「功士か。7時半くらいには出るんじゃないか。」
「ふーん、そっか。」
なら7時半前に行かないと、桐間はおこしに行けないな。
春は結羽が用意した味噌汁をすすりながら思うと、清道はハッとすると、春の方を見る。春は清道に気づかないまま、ご飯を楽しんでいる。
「はる! ま、まさかだが、朝から功士に会いに行くとかそんなんじゃないよな?」
「…う? そうそう」
まぁ正式には、桐間のこと聞きに行くんだけど。なんて最後の方の言葉は清道には聞こえていない。もう清道の頭のなかには、功士に対する苛立ちしかないのだ。そんな清道を見ながら結羽は親バカにもほどがあるとため息をついた。
7時10分、一通り準備が済んだ春は家を出ようとすると、バタバタしながら清道も一緒に出てくる。
「父さん、出るの早くないか?」
「いいんだ、一緒にいこう。それより春、アイス買ってあげようか」
「まじで? やった!」
笑う春と春の頭を撫でる清道は、アイスをあとにして、功士の家に向かった。10分も経たないうちに着くと、インターホンが鳴らす。すると、向こう側から功士の声が聞こえた。
「理依哉、起きて。僕いっちゃうよー!」
「うるせーな! こっちは眠いんだよ」
「もう! 知らないからね!」
そのやり取りが丸聞こえな春と清道は、功士が取り乱してるのは珍しいので、それを少し笑いながらドアが開かれるのを待った。
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