「じゃあ、俺、毎日桐間を迎えに行くよ。」
『…は?』

 先ほど桐間に単細胞、と言われたばかりの頭で考えた結果こういう結論になった。
 今の一瞬の中での、春の考え方はこうだ。桐間は寝坊してはいけない、だが、絶対にする(イメージ的に)。功士に毎朝起こさせるのも可哀想だし、なにより功士は桐間に強く言えなさそうなのでならば自分が直接行って起こした方がいい。そしてどんな理由より、朝から桐間を拝みたい。これが一番重要である。自分は朝はかなり、弱い方だが、桐間のためならばやれる。愛の力である。こうして、桐間を起こさないといけないという任務があるため、自分は絶対に起きる。自分の寝坊も改善出来、毎朝桐間に会える。
 これぞ一石二鳥。

『断る』
「ええええ、なんでだよ!」
『お前みたいなストーカーを、毎日俺の家に入れるわけにはいかないよね。』
「う。」

 下心があった春は、桐間の言葉に反論できなくなる。前にもこのようなことがあったが、春は嘘が出来ない体質なのだ。
 言葉に詰まらせていると、桐間は心底軽蔑するように息を吐いた。

『ほんとお前キモい、人間のクズ。ホモとか受け付けてないから。』

 ぐさり、ぐさり、ぐさり。次々と刺さっていく桐間の言葉は、春のHPを0にするには十分過ぎる言葉である。桐間はきっとなにも考えず、“ホモ”と発したのだろうけれど、そう桐間に言わせるとは自分が態度に出ているのではないかとハラハラした。確かに好きなオーラは出しているが、さすがに恋愛とは受け取らないであろうと安心しきっていたからだ。
 春が緊張しながら何を言おうか悩んでいると、受話器の向こう側からは、怒る功士の声とからかったように笑う桐間の声がした。
 ああ、よかった、ふざけてだ。
 春は安心すると、会話を繰り出す。

「桐間、それは酷いぞ」
『だってお前、俺のこと大好きじゃん』
「そ、そうだけど」
『なに照れてんの、きめーな』

 口が悪すぎる。
 春は電話が置いてある棚に、肘をおき頭を抱えた。まだ話していたいがこのまま電話を続けたら、自分はいつか死んでしまう。
 春は自分の身を案じ、じゃ頑張れよ、とクールを気取り、桐間の返事も待たずに電話を切った。何度も言うが春は、電話を続けたくてたまらなかったのだが、自分の身のほうが少し大事のようだ。
 すると、それを見計らってか、清道は春の肩に手をおいた。

「は、春。電話が終ったなら、一緒に風呂でも入らないか。」
「断る」

 春は先ほど自分が言われた言葉を清道に言いながら、一人で風呂場へと向かう。結羽は、あらら、と気にしていないようだ。残された清道は、似合わないスウェットを引っ張りながら首をかしげる。

「…反抗期なのか」
「ただあなたがいやなだけじゃないかしら」

 結羽は雑誌を捲りながら、清道に淹れさせた珈琲をすすった。





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