春が桐間を追いかけて校門を出ると、そこには桐間の姿は無かった。やはりもう帰ってしまったのだろうか。だが、春と桐間は住んでいる場所は同じ区域なので、駅に行けば会えるはずだ。
 春は駅へと早足に歩くと、見慣れた後ろ姿を見た。いそいで駆け寄ると気配が分かったのか、嫌な顔をして走って逃げようとする。だが、春の体力は登校拒否に近い桐間よりは確実にあった。簡単に捕まえられた桐間は、息を切らしながら言う。

「ッハア、あのデカイヤツは?」

 周りをきょろきょろ見ながら言う桐間に気にしてくれているのか、と思えば、「あいつにお前と居るとこ見られたら殺されるね」と鼻でわらうので。どうやら自分の心配だったようだ、と春は期待した自分をせめる。
 浩は桐間に対してそんな表情をしているのか、と春は思うが気付いていないのは春だけだった。浩が桐間を見る目は、刺すような目である。桐間は人から嫌われるのはなれているが、浩にはなにもしていないので、少し気になっていたようだ。

「ひろは、いいんだよ」
「なんで? 親友なんでしょ、ながーい付き合い」

 誰から聞いたんだ。いえば、功士とつまんなそうに桐間は言った。けれどここから、桐間から離れたくなくて、春は黙って桐間にくっついたまま動かない。
 桐間は気味悪がって離れようとしたが、なかなか離れないのでため息をつくと、春がくっついていることを気にせずに歩き出した。これは、桐間の性格でいえば、認めたということになる。春は目を輝かせた。

「え、一緒に帰っていいのか」
「勝手にすれば。ストーカー眼鏡のしつこさには、もうお手上げ」

 睨みながら言う桐間に、春は満面の笑みを返す。ストーカー眼鏡やしつこいなどともんくを言われているのに、良いと言われた嬉しさに気付いていないようだ。春の笑顔を見た桐間は、何か言おうとして、止めた。
 そんな桐間を見て、春は聞くがなんでもない、と返されて話は終ってしまう。駅について電車を待っていると、桐間がぽつりと言葉をもらした。

「親友、じゃなくて、俺選んでよかったの?」

 桐間には珍しく、ひかえめに聞いている。春は驚くが、すぐに笑いながらこたえた。

「桐間がいいの」

 瞬間、桐間は目をおおきくし、そのあとに自分の腕をひどく握った。そんな桐間の変化に気付かない春は電車の到着時刻を見ながら、遅いな、ともんくをたれる。桐間は俯きながら、春と距離を縮めた。





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