「ううう、噂をすればだな、しゅん」
「おおお、おう、そうだな、龍太」

 動揺が隠せない春と龍太は、お互いの肩を掴みながら笑う。その様は気持ちが悪いが、二人は至って真剣だ。喜びを隠せない春に、龍太もまた喜びを隠せないでいた。春の背中を押すと、行けよ、と一言。春が首を傾げれば、龍太はこまったように笑った。

「教室だと人来んだろ、人いねぇとこで話したほうがいいんじゃね?」

 桐間が来てくれるかどうか不安だけど、
 龍太はあたまをかきながら言う。春は龍太の気遣いが嬉しくて何か言おうとするが、言葉を詰まらせてごめん、とだけ言うと教室を出た。
 それを見ながら、龍太は嬉しそうに笑うのだった。


‐‐‐‐

 階段を降りながら、春はおかしいと思った。普通ならば教室に行く途中、必ずしもこの階段はのぼるはずだ。もう一つの階段は遠回りであるから、その階段からのぼることはないだろう。一階につくと、もちろん、桐間の姿はない。やはりのぼったのか、春は思いながら教室に戻ろうと階段に足をかければ、遠くから話し声が聞こえた。どうやら職員室からのようだ。気になったのか、自然と春の体は職員室へと向かっている。瞬間、聞き慣れた声がした。

「―…って言ってるでしょ」

 怒ったこの声、桐間だ。春は職員室まで走って行くと、次は担任の声が聞こえる。何を言っているのか分からないが、どうやら揉めているようで、春が入れる雰囲気ではない。
 耳をすましてみようと思うと、いきなりドアが開いた。目の前には桐間が立っていて、ガッチリと目があう。

「お、おはよ」
「……本物のストーカー」

 だから違うって!
 春が言おうとすると、桐間は黙って春の横を過ぎていった。追おうとすると、担任と目が合う。いつも温厚な担任は、少し顔を歪ませていた。聞こうと思ったが今は桐間を追いかけなくては、一礼して目をそらすと、桐間の後ろを追う。
 桐間はわざと大股にして歩くので、春が歩いても追い付けない。ここは、と走り出すと、桐間はいきなり止まり、春は桐間の背中に激突した。桐間は前に倒れ膝をつき、春は後ろに倒れしりもちをつく。桐間は後ろを向くと、春を睨み付けた。

「いった。もうなに、ついてこないでくれる?」
「だっ、だって気になるんだもん」
「だもん、ってかわいくないから、ストーカー」
「ストーカーじゃないって! たまたま、だよ」





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