「しゅーん」

 最後に跳ねるような声で春を呼ぶと、龍太は優しく笑った。春もつられてわらう。
 浩と話し合った日の放課後、浩は先生に呼ばれて職員室へと消えた。浩は頭が良いので二年生から先生に進路を決めろと言われていた。就職か、進学か。その資料を見るために、今日は職員室に行ったらしい。
 いつもなら寂しいとすら思うが、今日は好都合だった。浩とあったことを龍太に話す為だ。放課後龍太を呼べば、他の友達との遊びを蹴ってまでこちらに来てくれたのだった。
 龍太は待ち合わせにしていた、ファーストフード店に来ると笑う。

「ごめんな、いきなり呼んじゃって」
「いーんだよ、気にすんな! それより、また浩とまた喧嘩したっぽいな」

 ふざけた口調だった龍太は、先ほどのアイコンタクトで気付いたのであろう、春の核心についた。やっぱりな、龍太は呆れたように言いながらも、すぐに表情を明るくし春にうでを回す。

「気にすんなーって! なに言われたか知んねぇけど、あいつは放っておけば良いんだよ」

 何事にもポジティブな龍太、こんな時でも春に元気を与えようとしているらしい。だが、それが逆に春を苦しめた。
 浩を放っておいてなんかいない、俺は、

「浩に桐間を、嫌いになるって言ったんだ」
「…は?」

 龍太は先ほど明るくなったばかりの表情が暗くする。龍太は春を覗き込むように見ると、小さく本当か、と聞いた。もちろん、これは冗談じゃないことくらい抜けている龍太にも分かる。だが信じたくなかったのだ。
 春はゆっくりと頷く。それを見て、龍太は回していた腕を引っ込ませると、春をにらみつけた。

「なんで、だよ。この前頑張るって、言ったばっかじゃねーか。お前、そんな軽い気持ちだったのか?」
「違う、浩が、答えを迫ってきて。俺と友情切るか、桐間を嫌いになるか、って」
「そういう時は浩にガツンと言ってやれよ! あいつ冷静じゃないんだって。」
「わかってるよ、けど、俺、浩とはギクシャクしたくないんだ。俺、みんなと仲良くしたくて…」
「ああもういい、分かったよ」

 春のまとまらない言葉を聞いて、龍太は手をぶらぶらとふる。今までに聞いたことのないくらい、冷たい声だった。睨まれた時はなんとか怯まなかったが、普段優しい龍太とは繋がらない態度に春は一瞬怯む。桐間に接した時と同じ態度だった。
 どうにかしなければ、春は龍太に話しかけようとしたが、その前に話されてしまう。




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