――桐間と会わないで、二週間目だ。
 春は夏休みに近いことで浮かれている群れの中、1人で考えていた。
 桐間と会った次の日、龍太に激怒したという浩は普通だったし、怒られた龍太もそれは普通に接していた。可笑しいくらい周りも変わることなく、日々が只過ぎていく毎日。
 桐間、どこに居るんだろ。功士さんに連絡してねーのかな。
 春は桐間と共に功士を心配していた。功士は桐間を探しに、何度か行ったようだが、喧嘩した日以来帰ってきていないらしい。今、功士は出張中なので連絡が取れないが、その間に桐間が功士に連絡を取っていれば、と春は期待していた。
 はぁ、ため息をつくと、前に座っていた海飛が龍太を突く。龍太はそれを見て、腰に手を置きながら頭をかいた。

「まーた、なんか悩んでんのかよ?」

 つつきながら龍太が言うと、春は考え事の世界から現実に戻ってきたようで、頭を押さえ春は周りを見る。そんなとぼけた態度に周りは笑うが、一人だけ笑っていなかった。
 春が注目から外れた瞬間、彼は春に耳打ちする。

「桐間か」

 尋常ではないくらい、春の肩が揺れた。それはそうです、と言っているようなもので、否定する春を彼はにらむ。春はこっそり彼を引っ張ると、廊下の壁に打ち付けた。

「浩、もう気にしないでくれよ」

 春が疲れたように言うが、浩は首を横に振るだけだった。そう、浩は春から目を離さないので、少しの異変にも気付いてしまうのだ。
 心配してくれるのは嬉しい、けれどそうやって責めるような言い方が春を苦しめていた。確かに好きで居るならば友達を止めると言われた、関わってはいない、…好きとも言ってない。けれど、浩は勘が鋭い。鈍い春はもちろん、気持ちを浩に隠すことはできないだろう。

「なんで桐間なんだ」
「なんで、って。わかんねぇけど、ぐっとくるっていうか…」
「なにが?」
「なにが、て。困ることばっか言うなよ。」

 春は言い返せなくなり打ち付けていた手を離すと、教室に戻ろうとする。だが、手を掴まれて。いい加減しつこいぞ、とふざけた口調で忠告したが、言われた本人は涼しい顔をして春を見る。浩の前に戻って立てば、浩は春の顎を持ち上げて上を見させると、自分と視線を合わさせた。がっちりと合った中、浩はするどく刺さる目で訴える。

「もう、友達じゃなくて、いいんだな」

 二回目の脅しである。そんな浩に抵抗しようと春は、睨んだり振りほどこうとするが、迫力もない目や何度も振ったら春の方が傷付きそうな手で意味も無かった。
 どんどんしまっていく握力に、腕全体が痺れてくる。




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